The Beautiful Occupation – 「Indie Game: The Movie」

「Indie Game: The Movie」を観た。

良質なドキュメンタリーとしての資料性の高さはもちろん、それぞれのほとばしる志を胸に、成功を夢見る若者達を描いた青春映画としても素晴らしい作品だった。

インディーがインディーであった最後の瞬間を切り取った映画

今、世間でのインディーゲーム人気はすごい事になっている。”ファミ通”や”電撃”といったメジャー系メディアで取り上げられる事が珍しくなくなり、個人レベルでのブログでも、インディーに限定した情報を扱うものが少なくない。

しかし僕や一部好事家達にとって、インディー”業界”はもはやHypeの象徴、堕落したシーンとして蔑むべき対象だ。それはIndependent Games Festival(IGF)の腐敗や各種メディアの過剰フィーチャー、国内におけるDSiware版「洞窟物語」配信停止の疑惑など、”インディペンデント”を体現するとは口が裂けても言えないような状況にあるからだ。

だからこそこの「Indie Game: The Movie」は涙が出るほどに素晴らしい。

この映画はインディーがまだメディアやコマーシャリズムに浸食されるその直前の2010~11年、愚直なまでにゲーム作りに人生を捧げた若者達を追ったものだ。

 

成功者と夜明けを待つ者、あがく者。それぞれの視点

この映画は3組(4人)の開発者を中心に描かれる。

09年、時間制御パズル「Braid」がヒット、批評者筋でも前代未聞の高評価を得た。今や次の動向が最も期待されるデザイナーとなった Jonathan Blow。

ウルトラハードコアな2Dプラットフォーマーというオールドスクールなコンセプトと、デスレコードを繰り返し再生させる事による「死の楽しさ」を同居させ、大ヒットした「Super Meat Boy」。そのリリースを目前に控え、期待と不安のまっただ中で日々を過ごすEdmund McMillenとTommy Refenes。

08年にIGFのビジュアル部門を受賞、期待を一身に背負いながらも未だリリースの目処がたたず、内外からの強烈なプレッシャーに苛まれ続ける「FEZ」のPhil Fish。

それぞれを取り巻く環境は全く違う。既に成功者として名の高いJon Blowは「Braid」のメカニズムやゲームはどうあるべきか、をクレバーな分析を織り交ぜ、この映画では語り部として描かれる。

一方、Team Meatの2人はXbox Live Arcade(XBLA)のリリースに向け、複雑な欧州ローカライズやバグフィックスに忙殺されながらその日を迎えようとしている。

またPhil Fishは、彼らの中で最も早くインディー界隈で名を馳せたにもかかわらず、3年経っても一向にリリースはおろかDEMOの予定も立たない。突き刺さるようなネットの声に苛立ちながら、ひたすらに開発を続けている。

 

さらけ出される開発の苦労と歓び

この三者三様の視点と環境を織り交ぜ、巧みな編集によって展開していく様子はとてもスリリングだ。

特に、Team MeatのプログラマーTommy Refenesがインシュリン注射を打ち、金の話ばかりする周囲の声やリリース後に起こるかもしれないバグに怯え、神経を尖らせながらリリースを待つ様子。また初のプレイアブルデモが展示されたPAX 2011、頻発するフリーズバグを前に右往左往し、ペコペコ謝りながらPCを再起動し続けるPhil Fishの姿は、観ていて本気で胃が痛くなった。

しかしその苦難同様、ゲーム作りには巨大なカタルシスもまた存在する。

Super Meat Boyリリースのその瞬間、それまで陽気で冗談ばかりのEdmundが涙を流しながら放った言葉。「今この場にTommyが居てくれたらって思うよ。本当に」。Youtubeに上げられた、老若男女が一喜一憂するプレイ動画を観て心から笑うTommyの表情。

当日からのこのシークエンスは正直、ボロボロに泣けて仕方なかった。自分が面白いと思える作品を作って、誰かがそれを楽しんでくれる。僕がこれまで体験してきた最高の瞬間、KPIがどうだとか、そんなクソみたいな理由よりも重要なその瞬間がフラッシュバックされてどうしようもなかった。

 

初期衝動を蘇らせる心の一本

コードの一行どころか、仕様決定の打ち合わせにも参加せずキャバクラ通いを続け、普段現場に顔も出さないのにインタビューだけ独占して受け続けるPや、ディレクターとは名ばかりで遊んでばかりいるような人。またはひたすら歯車のように働かされ、ゲーム作りそのものに疲れてしまった人。これは、そんな人たちこそ観るべき映画だ。

まだ自分が何者でも無かった時代、どんな思いで自分たちがゲームを作っていたか、初めて作品が世に出たときの感動と一抹の寂しさ。そしてそれを遊んでくれた人たちを見たときの多幸感。そんな初期衝動を、この映画は鮮やかに蘇らせる。まだインディーシーンが尊く、美しかった頃。その瞬間を瑞々しく切り取ったこの映画には、そんな力がある。

Super Meat Boyの大ヒット後、今の心境を聞かれたEdmundが涙をこぼしながら放った台詞がとても印象的だった。

「このゲームを遊んでくれた子供達がこんな風に思ってくれたら。『なあ知ってる?このゲームって、たった二人のオッサンが作ったんだってさ。俺にもゲームが作れるかな?』こんな風になってくれたら最高だ。本当に最高だよ。」

Link

公式:http://www.indiegamethemovie.com/

Jonathan Blow’s home page:http://number-none.com/blow/

Team Meat:http://supermeatboy.com/

Polytron :http://polytroncorporation.com/

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