地べたに這いずり回って泥水をすすり、何度も割を食いまくった去年に比べると、幸い今年はそこまで悪くない。何より開発のリードを担当したタイトルが1本リリースされ、お客さんからの評価も上々、売り上げも想定より大分好調、というのは素直に喜びたい。
業界的には、本格的に導入され始めたサブスクリプションサービスの台頭が印象として特に大きかった。EA Access PremiereとApple Arcade、Xbox Game Passをそれぞれお試しで加入してみたが、お得感も利便性も相当なもの。ここ数年で良いゲームを作るスタジオを怒濤のように傘下に収め、新作を初日からXBPで配信する本気度のMicrosoftは特にすごい。いち開発者として、DLCを含めた追加の少額課金の更なる重要性など、ゲームの「売り方」を考え直さないといけないだろうな、と強く感じた。
今年プレイしたゲームは以下。
PC
- Jurassic World Evolution
- Factorio
- Biohazard Re:2
- Apex Legends
- Anthem
- Dota Auto Chess
- SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE
- Risk of Rain 2
- The Division 2
- アサシンクリード4 ブラックフラッグ
- Magic the Gathering: Arena
- カプコン ベルトアクション コレクション
- Dota Underlords
- Remnant: from The Ashes
- World of Warcraft Classic
- Baba is You
- Borderlands 3
- The Outer Worlds
- Planet Zoo
- Forza Horizon 4
- Reventure
PS4
- DEATH STRANDING
- Wattam
Switch
- 大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL
- Octopus Traveler
- スーパーカービィハンターズ
- 悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション
- Diablo 3
- Tetris 99
- SDガンダム GGeneration Genesis for Nintendo Switch
- リングフィット アドベンチャー
- ポケットモンスター シールド
- ルイージマンション3
- ファイアーエムブレム 風花雪月
Mobile
- ロマンシング・サガ リ・ユニバース
- Auto Chess
- 崩落のCarneaades
- エピックセブン
- World Flipper
今見るとPS4で遊んだ作品が2本だけってのが自分でも驚く。とにかくSIEにはPS5では一も二もなく静音性を最重視して開発している事を強く願う。
個人的に気に入ったタイトルはそれぞれ以下の通り。
Risk of Rain 2
個人的にこの10年でも最も好きなタイトルのひとつ、2Dプラットフォーマー『Risk of Rain』の続編。
時間経過により強制的に進む敵の量&質の極端なインフレと、それに対抗するための効率的なレベリングと装備収集。前作で完成された強固なゲームメカニクスにはあえて手を加えず、まさかのフル3DのTPSへと形を変えてファンを驚かせた。
正直、発表直後は「あの物量で戦うアクションは3Dじゃ成立しないだろ」と思っていたのだが、それは完全な杞憂だった。地道な基礎実装と処理の最適化に一年以上をかけ、大量のオブジェクトとパーティクルが発生しても殆ど処理落ちを感じさせない強固なシステムを構築する根気と、敵の移動速度と弾速を含めたきめ細やかなバランス調整によって前作を超える遊びの幅が生まれていたのには舌を巻いた。
ちょっと手触りが全盛期のトレジャー作品っぽい感じがする、と思うのは自分だけか。
今作から完全日本語化&Switchにリリースされたことで、「知る人ぞ知る隠れた傑作」扱いだったこのゲームのポテンシャルがマスへと広がったのも個人的に嬉しい。
リングフィット アドベンチャー
アクションゲームが作れる人間は何でも作れる。あくまで持論だが、自分が以前から確信しているゲーム開発の真理のひとつ。これを改めて強く感じたのがこの『リングフィット アドベンチャー』の存在だ。
とにかく自分が行う行為の一つ一つに対するフィードバックの気持ちよさ、手応えの良さが尋常じゃない。自キャラのアニメーションの緩急とキレ、繊細に調整されたSE、そして振動。想像よりはるかにキツい運動も、動作ひとつひとつに気持ちいいフィードバックがあるおかげで頑張れる。このあたりのクオリティはさすが黎明期から今に至るまで世界最高峰のアクションを作り続ける会社なだけはある。
更に個人的に面白いなと思ったのは、全体のまとめ方を思いのほかストレートに「ゲーム」として構成していたこと。『Wii Fit』や最近では『Fit Boxing』など、基本的にこの手のエクササイズソフトは幅広い年齢層が”誰でも出来る”ことを中心に据えているためか、人によってはむずかしい遊びの駆け引きやゲーム的なメカニクスをあえて廃しているものだと思っていたのだが、今作はレベルや装備、相性といった概念が目白押し。かなりベタなゲームとして作られている。しかしそのおかげで、辛い運動でもやろう、飽きずに続けよう、という強いモチベーションになっていると思う。
今やカビの生えた言葉になってしまった「ゲーミフィケーション」という言葉があるように、かつて行動に対する定期的な報酬と評価によって習慣化・継続率を上げようとする設計思想があり(飯野賢治がやっていたfytoの仕事は嫌いじゃなかった)、任天堂も様々な事をやってきていたが、結局まとめ方として「ゲーム」そのものを作ることが一番しっくりきた、ということなのだろう。
余談だが、作中の相棒「リング」の声優さんが主演されているディズニーアニメ『ビッグシティ・グリーン』、観ると運動したくなってくるのでオススメです。
DEATH STRANDING
個人的にMGS以降の小島秀夫作品の中で一番好きなゲームかもしれない。
元々『Euro Track Simulator』が個人的に大好物だからというのもあるけど、ゲーム的な仕様と世界観がとても美しく調和していると感心したタイトルに出会ったのは久しぶりだった。
比較的小規模な開発でオープンワールドを作るにはどうすれば良いか、という色々な工夫と仕様が、上手くゲームの世界観・設定、そしてゲームプレイに昇華されているのに触れる度、何だかんだ言って小島秀夫は天才なのだなあと改めて感じた作品だった。
(前述のETS等、既作品で証明されてはいたが)フィールドのterrainがゲームプレイの中心であり敵でもあるとした遊びの基礎設計、地形に干渉する非同期マルチプレイにありがちな”後追いプレイヤーが楽になりすぎる問題”を「まず自力で分断されたネットを繋ぐ」という納得できる設定で回避している点、「時雨」でフィールド上の物が高速で腐ることでゲーム内の経済が頭打ちにならずに回り続ける点など、いちいち感心しきりだった。
コナミ退社後、新スタジオの設立から短い期間でリリースしなければいけない、という強烈な制約が、逆に小島作品にとっていつも危うかった「開発初期から最後までブレないゲームの全体像・フレーム」を作ったというのも大きいのだろう。
そう考えると、小島さんは切羽詰まった状況になると爆発的に良いゲームを作る人なのだろうなと思う。自分も出自がゴミみたいなハード性能だったi-modeアプリからだったのでちょっとわかる(と言うとおこがましいけど)が、人でも期間でもハード性能でも、どうしようもない制約が目の前にある状況で、いかにそれを逆手にとってアイデアを生み出せるかが作品の生死を分ける。しかしそれが上手くいけば、他にはない新しい作品が生まれる。そんなマジックが起こることがある。例えばかつて小島さんがMSXで初代『メタルギア』を作った時のように。
そういう意味で、コジプロの次回作は期待半分、心配半分ではある。
ルイージマンション3
『ルイージマンション3』は本当に恐ろしいゲームだ。といっても、ホラー的な恐ろしさではない。このゲームを作った開発者達の、狂気すら感じる遊びへの執念がすさまじすぎる。
本作品は基本的にはこれまでリリースされた『ルイージマンション』シリーズの正当続編。いつもの掃除機アクションに加えて、自分の分身として使えるスライム「グーイージ」。それらを使い、様々な仕掛けを解きながら進んでいく、といういつもの流れ。
なので、ゲームそのものとしては手垢の付いた正統派のアクションアドベンチャーなのだが、とにかくその「仕掛け・遊び」の密度がギチギチに詰まってとんでもない事になっている。
ホテル(今作の舞台)のあらゆる部屋、廊下にまでも最低ひとつ、物によっては3つ以上仕込まれている仕掛けと遊び。しかもそれらの半分以上が新鮮な驚きを伴う新しい仕組みとして提案されるのがとにかく驚異的。もちろん、ベースの「掃除機アクション」がすさまじく直感的かつ応用が利く優れた遊びなのはあるのだけど、それにしてもこの密度で最初から最後まで構成しきるのは本当にすごい。考えすぎて脳が沸騰するくらい、ひたすらアイデアを練り込み、取捨選択し、詰め込みまくった遊びの濃度。正直濃すぎて窒息しそうになるくらいだ。
一部ゲームメディアが『ゼルダBOW』を超えるSwitch最高傑作に挙げているのは決して過大評価ではない。ゲームデザイナーが決して無視してはいけない今年の一本。
Reventure
今年の完全なダークホース。
簡単に言うと、広いフィールドを自由に探索しながら、何度も繰り返して様々な仕掛けや発見をし、全100種類のエンディングを全て発見しよう、というゲーム。
エンディングの種類は大目標である「魔王に囚われたプリンセスを救出する」からはじまり、「王様を殺す」「核爆弾で魔王城を破壊する」「ドラゴンに溶かされる」「ドラゴンに求婚する」「釣りにハマって白骨化する」「路上の石ころに躓いて死ぬ」といった荒唐無稽なものも多々。
謎が多く転がるフィールドを探検しながら「これをやったらどうなる?」と試行錯誤し、新たなエンディングを見つけていくのがとにかく楽しい。アイテムの「剣」ひとつとっても、”誰に使うか”だけで大量の答えがあるわけで、次に試したい行動がどんどん湧いて出てくる。このあたりは傑作『Minit』を彷彿とさせる。
そして本作で絶妙なのがアイテム所持と自キャラの運動性能の変化の仕組み。
ゲーム中には剣や盾、フックショットや爆弾など、様々なアイテムが転がっている。そして前述の通り、それぞれにエンディングに繋がる多様な使い道がある。そのため基本的に見つけたアイテムを拾いまくるのが最適解に思えるが、アイテムを一個持つ度に自キャラの運動性能が重さによって低下してしまい、移動範囲に制約が生まれていく(主にジャンプ高さ)。そのためどのタイミング・順番でアイテムを取るか・取らないかにパズル性が生まれている。この設計が相当上手く、ワンプレイのたびに発見と次の自分なりのタスクが生まれるというわけ。
ローカライズの品質もかなり高い。ミーム・各種サブカルチャー寄りのギャグが多く、言い回しが繊細なものが多いはずなのだが、不自然な翻訳は(自分が見る限り)無かった。
ゲーム実況、または家族とリビングで、といった観客がいる状態でのプレイには特におすすめ。
その他
Dota Auto Chess
ジャンル的には今年を象徴するタイトルといっていい。年始早々にDota2のカスタムゲームとしてリリースされてからの恐ろしい勢いの拡散具合は一昨年のPUBGを思い出させる。戦略を練り、設定し、行く末を見守るプレイフィールの中毒性はゲームではタワーディフェンス、引いた視点で言えば多くのギャンブルと同じなので今思えば当然なのだが、これをこの形で作り上げたDorodoの面々は本当にすごい。
亜流・rip-off・本家の再開発版などバリエーション等あるが、個人的には馴染みのヒーローがいるDota Underloardsが好き。
The Outer Worlds
Obsidianがいつもの野心的なゲーム設計に加えて、今まで見られなかった抑制的なまとめ方を覚えて作りきった堅実な一本。プレイヤーの会話や行動で劇的に世界が変わるダイナミックさはそのままに、オープンワールドをやめたことで軽快でバグが少ないコンパクトなゲームに収まっている。そのせいか探索・発見の面白さがスポイルされてしまったのが寂しい。
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE
元々重度の『天誅』フリークだったので、遊びのベースを疑うことなく購入したが、ゲームプレイ部分以外でも独創的な世界観と風情に心奪われる。特に公家の扱いと描写はさすが。そしてゲームそのものとは離れるが、The Game AwardのGoTYに選ばれながらも、自分ではなく開発スタッフ全員の貢献を常に伝えようとする宮崎英高のいちゲームデザイナーとしての矜恃に強く心打たれる。
という感じ。
最近は熱帯植物を育てる事に夢中なのだけど、ふりかえるとそこそこ遊べていたのでちょっと安心した。とはいえ『十三機兵防衛圏』は買ったはいいけど起動すらできていないのは反省点のひとつ(ユーフォルビアの株分けとメンテナンスが以外と大変だった)。
来年はまずEA Premiereに加入しておきながら触れてない『STAR WARS: Jedi Fallen Order』からやる予定。『マンダロリアン』、セルジオ・レオーネみたいでとても良かったし。
来年もよろしくお願いいたします。
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