例によって、ひたすらゲームを作っていた一年だった。リードデザインとディレクションの間を行ったり来たり、の謎の立ち位置だった開発も一段落し、来年には作品をお客さんに届けることが出来ると思う。
個人的なこととしては語学だったり個人開発だったりを本腰入れてやりつつ、”一人呑み”の楽しみを見出してしまい、誘蛾灯よろしく、赤提灯に魅了されてしまっていた。
業界的には、とにかく任天堂とSwitchの大躍進に尽きる。国内でコンシューマ開発のフィールドで踏ん張ってきた自分は、データとしてというより、実感としてその「風」の勢いを感じている。外注のデザイン会社さんの話でも、所謂「遊技機」の寒さと反比例するようにコンシューマ系の仕事が増えている、と耳にする。個人的には、2000年代中頃にあったPCゲームの再隆盛の感覚に近い。
そして、同じゲーム屋として嫉妬するほど空恐ろしい任天堂の「新世代」の台頭。これはもう本当に戦慄する。
今年プレイしたゲームは以下。前述の通り酒量が増えた分、プレイした本数・時間が圧倒的に減った。ちなみにVRはHoloLensを仕事で、VIVEを個人で買ったのだけど、首が地獄のように悪い自分は基本的に装着時間10分が限界なので、個人で買った専用タイトルは少ない。
PC
- Shantae Half-Genie Hero
- Stardew Valley
- Gwent: The Witcher Card Game
- RimWorld
- Transistor
- XCOM 2
- PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
- Dishonored 2
- Darkwood
- Thimbleweed Park
- Dark Souls 3
- Dead by Daylight
- Battle Chasers: Nightwar
- RUINER
- Fissing Planet
- Death Skid Marks
- Middle-Earth: Shadow of War
- Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
- Heat Signature
- FAITH
- Hi No Homo
- Doki Doki Literature Club!
- Arizona Sunshine(VR)
- SUPERHOT VR
- RoboRaid
- Fragments
- Superflight
- ヘルニ屋
- 駆逐マン
- 力士ロケット
Switch
- ARMS
- ゼルダの伝説 Bless of the Wild
- スプラトゥーン2
- スーパーマリオオデッセイ
- ゼノブレイド2
PS4
- 仁王
- Horizon Zero Dawn
- ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて
- Destiny 2
iOS
- Simcity Build it
- Make More!
- ファイアーエムブレムヒーローズ
- KOF98 Ultimate Match Online
- どうぶつの森 ポケットキャンプ
- デスティニーチャイルド
去年とは対象的に、情緒的に自分の琴線に触れるタイトルはあまり多くなかったが、中でも興味深い、心を動かされたタイトルを幾つか書いておきたい。
ゼルダの伝説 Bless of the Wild
国内外含む多くのアワードでGoTYを軒並み取りまくっている、名実ともに今年の代表作。これまでのゼルダの文法、言い換えればドグマから脱却し、かつ極めてロジカルに構造を作り上げた傑作。
…と言いつつ、ゲームそのものとしては(リリース当初も、今も)個人的にそこまで熱を上げているという訳でもない。
もう十年以上、古今東西あらゆるオープンワールドのタイトルをプレイしすぎて不感症気味になっているのも理由としてあるのだろう。
ただ、その”不感症”であるが故に、このタイトルの作り方・構造に驚かされた。
ここでも書いているように、GTA3から連綿と受け継がれてきたフォーマットとは全く異なるアプローチでプレイヤーを「遊ばせる」作り(開発の方は確か”引力ドリブン”と言っていたが)は、今後この手のジャンルのフォーマットになり得るくらいの手法だと思う。とはいえ、構造・手法を理解したとしても、これを真似できるスタジオ(体力的にもタレント的にも)がどれだけあるかは微妙なところだが。
その他、「化学エンジン」なども含め、割り切り・効率化と従来までの職人的な実装のバランスなど、本当にクレバーな人たちが作ったんだな、とプレイして感じた瞬間は数え切れない。
ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて
半ばお祭り・イベント的なタイトルなのと、Tech的にどう作っているのか気になったのでPS4版を購入。
“ゲーム”の作りとしては流石ドラクエといったところ。チュートリアルやプレイヤーへの導線、間が空いてタスクを忘れた人へのケアを忘れない設計、今風のバランス調整など、「つまづかない、挫けない」サポートの手厚さとその手間を惜しまないホスピタリティはやはり凄い。
アートに関してもバランス感覚が巧い(PS4版)。所謂「鳥山画」の非リアルなキャラクターに対して、背景やアセットの落とし所には関心した。単純にフォトリアルにするのではなく、モデリング自体はリアル寄りにしつつも、テクスチャの描き込みはジオラマ/ミニチュア寄りのバランス。スクウェア・エニックスのアーティストは流石トップクラスの人間が集まるだけある。
ただ一方、PS4/UE4での実装をしたことで、ドラクエとしての醍醐味・ワクワク感がスポイルされてしまっている箇所がある。
PS4版はメモリの関係上、フィールドをエリアマップ式を採用している。そのため外に出ても(広さの大小にかかわらず)「分割された空間」が繋がりあう構造になってしまう。そのせいで、世界地図とフィールドの位置関係が分からなくなる(少なくとも自分は100時間近くプレイしても理解出来なかった)。こうなると自分がドラクエ(というかRPG全般)の醍醐味として感じていた「旅」の要素が弱くなってしまう。
これまで船や飛行物(今回ではケトス)に対するモチベーションや、それらを得た時に感じるワクワクは、それまでの道中で見てきた「見えたけど行けない場所・建物」に行きたい・行けるようになる事への楽しみや可能性の広がりだった。それが前述のエリアマップ式になってしまった事で、それらがゴッソリ失われてしまったのはとても残念だった。
実際、船もケトスも、使えるようになったそれぞれが乗り降りできる箇所は極めて限定的。ケトスに至っては、完全に”それ専用”の複数のエリアに行けるようになるだけになってしまっていた。同一の世界を自由に行けるようになった、というより、歩きでは行けなかった「別レイヤーの空間」にアクセスできるようになった、という印象。
そういう点で考えると、個人的には3DS版・2Dモードでプレイするのが最適解だったんじゃないかと思う。(ピクセルアートへの望郷は特にない)
シルビアの描写については、所作がステロタイプ的すぎたり、時折危うい所はあったものの、あくまで一人の「個性」としてゲームも登場人物達も扱っているのは(こと「日本のゲーム」という点において)とても感心した。
Stardew Valley
牧場物語(Harvest Moon)インスパイアの中でダントツに売れた一本。実際は去年のリリースだったけど、プレイしたのが今年冒頭だったということで。
このゲームに対して、個人的には牧場物語よりも自分のオールタイムベストのひとつ「箱庭生活 ひつじ村DS」と同じ匂いを感じている。「ひつじ村」が衝撃的だったのは、畜産の生々しさ(解体や増えやすい動物を潰して他の餌にするなど)や集落での濃いが故のギスギスした人間関係、という負の要素を描ききったところにある。
『Stardew Valley』において、プレイヤーである主人公は都会での激しく無機質な労働に疲れ切って、祖父の残した牧場を継ぐことから物語がはじまる。都会の喧騒から離れ、のどかで温かみのある自然や人とのふれあいが待っているかと思えば、そうではない。
このゲームに登場するほぼ全てのキャラクターは何かしらの悩みを抱えている。それは貧乏だったり、田舎故の生き辛さからくる鬱、アルコール依存症、戦地で受けたPTSD、村八分の浮浪者など、”ほのぼの”とは対極にあるハードなものばかりだ。さらに、スーパーマーケットという大資本の波が村に押し寄せる。プレイヤーの選択によっては、住人が営んでいた個人商店が駆逐されてしまうこともある。
牧場運営だけではない、もう一つの重要な「生活」要素に対するこの”誠実さ”に、作者の生真面目であろうパーソナリティを想う。
FAITH
DOS、AppleⅡ、ZX Spectrum時代に触発されたホラーゲーム。
1986年9月21日、コネチカット州で起きた”悪魔憑き”事件の一年後、若い司祭がその呪われた家にもう一度調査に行く、というのがざっくりとした設定。
ビジュアルやサウンドはインスパイア元から解る通り、シンプルなローレゾ・8色程度のピクセルアート。サウンドはプレイヤーがすることはカーソルによる移動と、怪異が起こったときに十字架を掲げることだけ。
…なのだが、これがとにかく異常に怖い。
歪みまくった陰鬱なサウンドが、ジャンプスケアだけではない、状況の描写によって作られるイベントが、そしてしっかりとデザインされた秀逸なアートワークがとにかく恐ろしい。
プレイ時間は約2時間。フリータイトルなので是非プレイしてもらいたい。あまりに良かったのでTシャツ買ったくらい。
M O R T I S
PlayerUnknown’s Battlegrounds
今年はとにかく本作のインパクトに尽きる。比較的早めに買っていたものの、まさかここまで売れまくるとは全く想像できなかった。個人的にも一番プレイ時間が多かったタイトル。
これが売れた理由は既に色々な所で議論されていると思うけど、とにかくルールが一言で言えるくらいシンプル、知らない人が観ても何をやっているか理解できる、という所からどんな人でも「自分でも出来そう」と思える所が秀逸だったんだと今にして思う。そういう点では、競技性の高さはともかく、一番オリンピックのeSports種目に合っているのかもしれない。
今年、普段ゲームをしないような知り合い何人か(男女ともに)に本作の話題を振ってみると、結構な確率で「やってみたい」「既にやってる」と返されたのが印象的だった。
他にも偏執的な描き込みとアニメーションに驚かされた『Darkwood』、贅沢すぎる体験の連続だった『スーパーマリオオデッセイ』、2000年代エロゲーを彷彿とさせる野心作『Doki Doki Literature Club!』など、いろいろある。
(追記)完全に忘れてたけど、『Heat Signature』のダイナミックなゲームデザインは今年出色の出来だったことを記しておきたい。『GUNPOINT』作者の新作、といえば、そのマストバイ感が分かる人は分かるだろう。
来年もゲームを作り続けると思うけど、最近はなるべく現場で、最前線で作りつづけていたい、と強く思う。
もう何年も、仕様のひとつも切ってないのにFacebookで「クリエイター飲み会しましょう/しました」みたいなPostをしている元上司だったり知り合いをよく見るようになって、「こうはなるまい」と思うのと、自分と一回り、またはそれ以上離れた尊敬する人たちが今でもウンウン唸ってアイデアをひねり出したり、ガリガリ手を動かしているのを見て、襟を正すのと。
来年もよろしくお願いします。