はじめに
リードレベルデザインを主軸に各種ディレクション、シナリオ作業…と所謂中規模デベロッパでよくある光景の中、ひたすらどタイトなタイトル開発に四苦八苦した2012。そのせいもあって今年はあまり多くのゲームをプレイできなかった。
しかしそんな中でも、自分の心の琴線を激しく打つ作品というのはあるもので、その中のいくつかを簡単にピックアップしておすすめしたい。例によって、以下に挙げるゲームは「今年発売」ではなく「今年プレイしたゲーム」なのであしからず。
まずは今年覚えている限りの、プレイしたゲーム一覧(スマートフォンアプリ、ブラウザゲーム除く)。
・[PC]To The Moon (JP)
・[PC]Capsized
・[PC]LIMBO
・[PC]Gemini Rue
・[PC]Elder Scrolls V: Skyrim
・[PC]Orcs Must Die! 2
・[PC]Borderlands 2
・[PC]Hotline Miami
・[PC]XCOM: Enemy Unknown
・[PC]Darksiders 2
・[PC]DOTA 2
・[PC]LEGO Batman 2
・[PC]DayZ
・[PC]Diablo 3
・[PC]Counter-Strike: Global Offensive
・[PC]Jamestown
・[PC]Saints Row: The Third
・[PC]Indie Game: The Movie
・[PC]Autonomous (プロトタイプ)
・[PC]Black Lake (プロトタイプ)
・[PC]BRAZEN (プロトタイプ)
・[PC]Costume Quest (プロトタイプ)
・[PC]Dustforce
・[PC]Faster Than Light
・[PC]Hack n Slash (プロトタイプ)
・[PC]Hack, Slash, Loot
・[PC]Happy Song (プロトタイプ)
・[PC]Lone Survivor
・[PC]Mark of the Ninja
・[PC]Spacebase DF-9 (プロトタイプ)
・[PC]They Bleed Pixels
・[PC]Cardinal Quest
・[PC]Black Market
・[PC]Girl with a Heart of
・[PC]Orbitron: Revolution
・[PC]Project Black Sun
・[PC]Survivors of Ragnarok (Alpha)
・[PC]Tiny and Big: Grandpa’s Leftovers
・[PC]Volvo The Game
・[PC]Will Fight for Food
・[3DS]デビルサマナー ソウルハッカーズ
・[3DS]ポケットサッカーリーグ カルチョビット
・[3DS]とびだせ どうぶつの森
・[3DS]カルドセプト
・[Wii]ドラゴンクエスト10 目覚めし五つの種族
・[X360]Spelunky
・[X360]Fez
・(追記)[PS3]Journey(a.k.a.風ノ旅ビト)
その1: Diablo 3
今年ダントツでプレイ時間が多かったのがコレ。調整不足やRMT問題、エンドコンテンツの圧倒的不足など、リリース当初は「あれ?…これもしかしてクソゲーじゃないか?…あ、やっぱりそうだクソゲーだ!」な惨憺たる状況から、1.04パッチあたりを境に急激にやる気とおもしろさUP。このあたりはさすがBlizzardといえる。
Lv60からが本番の本作において、トレハンの結果にかかわらず、プレイそのものに報酬を与えるPalagon Levelsの意味は大きい。
その2: DayZ
今年最も話題になり、また業界・クリエイティブ面で最も影響を与えたであろう驚異のMod。ArmA2の非公式(主要開発者のDean “Rocket” HallはBohemia Interactiveの社員だけど)Modでありながら、公開された直後から本体(ArmA2)の売上本数を爆発的に伸ばした。
僕がこれをプレイしたのはアルファが出てから比較的すぐの4月末あたり。世間の耳目を集める数ヶ月前、熱心なModファン/PCゲーマーだけがプレイしていたサーバーはまさに地獄だった。きわめてリアル志向なデザインのArmA2をベースにしているため、その立ち回りやサバイバル方法も同様だ。山の稜線をどう気づかれないように歩くか、相手と自分の距離のはかり方、食料確保と夜間の動き方。それらすべてが現実味を帯びている。弾を一発も撃たず、ひたすら匍匐で数十分町中を動き、クソまずいパスタ缶を見つける。死んだらそれっきりの世界で生きる数時間。これ以上の濃密な体験はない。
その3: To The Moon
過ちは決して取り消すことはできない。失った物は決して戻ることはない。当たり前だが残酷な事実を突きつけながら、「こうありたかった」希望をこのゲームはそっと照らす。ヤクザが出ているからとか、セックスシーンがあるからとか、そういう下らない理由はこの作品の前では霞んで消える。真の意味で、大人が遊ぶべき、大人のためのビデオゲーム。
傑作。
その4: Hotline Miami
セックスとクラック、暴力が吹き出す犯罪都市マイアミ。プレイヤー”Mask”は自宅にかかってくる謎の電話の命令を受ける。ピザ箱、汚れた洗濯物、ボロいTVに繋がれたNESだけがあるアパートを出、デロリアンに乗り込む。
常にゆらゆらと傾く画面。質の悪いVHS風のノイズ。ビッカビカのネオンよろしくきらめくポストエフェクト。Sun Arawを筆頭に、テクノ、ダークエレクトロ、Dreamwaveが渦巻く極めて不穏なBGM群。ヘッドホンから反復して流れるキックの音と、死んでは殺し、死んでは殺すその繰り返しの超ハイテンポなゲームサイクル。
ちょっと弾が当たる、バットに殴られるだけで死ぬ自分とスカム。死は誰にでも平等だ。主人公だからといってダメージを受けても回復などしない。カバーアクションなんかもない。自分もスカムも基本的に一撃で死ぬ。画面外からでも容赦なく、ショットガンの弾は飛んでくる。武器も完全武装なスカム共に比べ、自分は徒手空拳。つまり、相手以上にとにかく死ぬ。死にまくる。そんな死(Game Over)とやり直しの中、何百回も死んでいる自分と、徐々に殺しが上手くなっている事実に気付く。嬉しさと背徳感が脳を満たす。
このHotline Miamiは、明らかに影響を受けているであろうデヴィッド・リンチの作品群と同様、表示されるテキストの何十倍もの情報を内包している。気まぐれで連れ帰ったヤク中女子が徐々に片付ける自室。皆殺しの後、1面の終わりの時だけ吐くゲロ。そして自室にあるNESの存在。このゲームが8bit風なのは懐古ではない。
ぱっと見、過剰に暴力的で古くさいゲームプレイに見えるだろうが、このゲームは現在のビデオゲームの文法の下、すさまじく緻密に練られたフォーミュラの上に成り立っている。はじめはいまいちピンとこない、猥雑・暴力性に嫌悪感を抱いていたとしても、1面をクリアしてしまったら恐らく貴方はきっと止まらない。そこでたった一度だけゲロを吐いた主人公同様、もう後には戻れない。
その5: Gemini Rue
これについてはもう十二分に語ったので、詳しくは以下を読んでもらいたい。
–https://flatage.com/archives/7405
–https://flatage.com/archives/7204
Gemini星系にあるコロニー名「Barracus」を舞台に、謎のリハビリ施設「Center-7」に隔離されてしまったAzrielと、その「Center-7」で目を覚まし、過去の記憶を一切持たないDelta-Six。この二人の主人公の数奇な旅。人間の人格を形成するのは記憶や過去の思い出なのか、それとも今現在の行動や意思なのか。ド派手な演出や展開もなく、ひたすらに淡々と進むシナリオと、抑えめに流れる美しいBGM。静かに、しかし丁寧に紡がれる物語がひたすらに心に沁みる。二人の主人公、AzrielとDelta-Six、そして物語の鍵を握る女性Sayuriの運命が交錯したとき、久しぶりにビデオゲームで鳥肌が立った。2012年最高の一本。
以上。最後に、今年最も残念だった出来事を書いて終わりたい。
それは”Indie Game”の名前が完全にHypeに貶められ、歪みきってしまった事だ。今更国内では「インディーゲームがすごい!」「今未来はインディーゲームだ!」と高らかに叫ぶ人間が多い。コンシューマ業界はダサい、みたいな風潮すらある。しかし、そんな奴らは大概そのゲームが”インディーである”事にしか興味がない。ゲームそのものの革新性やおもしろさ、本当の熱意が見えていないレイシストどもだ。
お前たちはなんでそのゲームをやってるんだ?大手パブリッシャーが絡んでないから?Notchが話題にしてたから?indiegames.comが誉めていたから?IGFで賞を取ったから?くだらない。
ビデオゲームを遊ぶって事は本来、そんなカテゴライズやレイシズムからは無縁の、最も遠くにあるものなんじゃないのか。どこの会社が作っていようが、面白ければ遊ぶし、つまらなければ100円を入れない。対戦台の向こうにいるヤツがヤンキーだろうと、デブだろうと、クソダサいクロムハーツ野郎だろうと関係ない。目の前にいるのはリュウであり、京であり、ジャッキーであり、獅子丸なんだ。
インディーだろうがブロックバスターだろうが、古かろうが新しかろうが、僕は来年もゲームを遊ぶし作る。
来年もよろしくお願いいたします。
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