世界の終りには雨が – 「Gemini Rue」(クリア)


Gemini Rue (Joshua Nuernberger / Wadget Eye Games 2011)

プレイ時間およそ9.2時間でクリア。素晴らしいゲームだった。

より派手に、より過激に。ビデオゲームに限らず、娯楽作品のどれもが話題性や”売り”を作るために、より刺激の強い映像や演出に手を出している。昨今ではCEROの対象の年齢設定がD,Zのものも珍しくない。斬れば血どころか四肢が吹っ飛び、直接的なセクシャル表現ももはや普通。

UCLAの学生であったJoshua Nuernbergerが制作し、Wadjet Eye Gamesから発売されたゲーム「Gemini Rue」は、まるで20年前から時間が止まっているかのように、システム、設計、ビジュアル共に極めてオールドスクールなADVだ。
ビジュアルは(あえて、な部分も当然あるが)640*480の低解像度、基礎設計もポイント&クリック式。いわゆる”フラグ”の管理も、ここ最近では当たり前な「立てる順番の(ある程度の)自由化」も無く、ピタゴラスイッチよろしく完全にアクションを順番通りに行わなければゲームが進まない。途中、「分かるか!」なクリッカブルオブジェクトも当然何カ所かある。表示系のバグも少なくない。正直、ゲームの設計そのものは凡庸なゲームだ。

それでも僕は、心からこの「Gemini Rue」を愛してやまない。

Gemini星系にあるコロニー名「Barracus」。主人公のAzriel Odinはこのコロニーを牛耳る犯罪組織”Boryokudan”の元暗殺者で現刑事。リハビリ施設「Center-7」に隔離されてしまった弟を救い出すため、所在すら誰も知らないCenter-7の手がかりを辿る。そしてその「Center-7」内部で記憶の一切を失ってしまったもう一人の主人公Delta-Six。施設の絶対的な権力者である”The Director”からの命令を受けながら、Center-7の中で出会った収容者のSayuri、Giselleと共にDelta-SixはCenterからの脱走を試みる。

Center-7に入ろうとするAzriel、脱出しようとするDelta-Six。二人の主人公の運命は徐々に近づき、やがて交差していく。


静謐かつ精緻に描かれるAzrielとDelta-Sixが紡ぐシナリオを、プレイヤーは最前列で見続ける。それを彩るのは、低く抑えたトーンで奏でられる素晴らしいBGMと、そこに重なる、Barracusに降り続ける雨の音。静かだが常に不穏さを醸し出す展開。よそ見は出来ない。パラメータは一切無く、一部で起こる銃撃戦を除き、ド派手なアクションも無い。やることはただテキストを読み、考え、ポイント&クリックで話を進めていくだけ。最初から最後まで、目の前の物語の傍らに寄り添うだけがこのゲームの全てだからだ。

だからこそこのゲームには美しさがある。遊ぶ者の心にひっそりと降り積もる、静けさに囲まれた感動がある。

3/14現在、2012年最高の1本。


Gemini Rue (PC) (輸入版)
Gemini Rue 日本語版(PC)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です