井上三太「隣人13号」全3巻

隣人13号 1 (バーズコミックス)

隣人13号 1 (バーズコミックス)

隣人13号 2 (バーズコミックス)

隣人13号 2 (バーズコミックス)

隣人13号 3 (バーズコミックス)

隣人13号 3 (バーズコミックス)

僕が貧乏学生だったころ、やむ終えず手放してしまったこの「隣人13号」が、今日「まんだらけ」で結構安く売られていたので買いなおしました。ここしばらく氏といえば「TT2」ばかり読んでいた事もあり、久々にガツンと井上三太マンガの濃厚なガスをページの隙間から吸い込んで大満足。

簡単に作品説明をすると、『小学生時代、激しい”いじめ”にあっていた青年「村崎十三」がとある工務店に就職すると、そこには当時十三をいじめていた主犯格「赤井」が居た。赤井は十三に気づかない。それどころか赤井は幸せな家庭を築いていた。そんな赤井に対し十三は積年の恨みを晴らすべく、心に溜め込んだ憎悪が生んだ凶悪なペルソナ「13号」と共に復讐を開始する…。』っていう感じのマンガです。

この当時の作品群は正直画力も厳しいものがあるし、何より乱雑な描画が読み手を相当数振り落としてしまうけど、それを補って余りある凄さがこの「隣人13号」には堆(うずたか)く積み上げられています。

凄まじいまでのスピード感と凶悪すぎる暴力描写*1基本的に嫌悪感満タンな人物・情景など、それこそ手に持った本からドス黒いガスが漏れてきそうな程のカルマが充満していて、全3巻を一瞬で読み終えてしまうという(1時間かからないですよ)凄い作品です。

で、これは井上三太作品のもつ不思議さなのですが、劣悪なシーンをこれでもかと塗り込めているにもかかわらず、妙に読んでいる側との距離を感じてしまう妙な感覚。13号が物凄い勢い、物凄いテンションでめった刺しにしている所を読んでもどこか白けてしまうドライな感覚。これが僕には逆に恐怖を感じてしまうんですよね。嫌悪感を感じない自分に、というか…。

何よりこのマンガの優れた所は、全編に渡る暴力描写よりも、赤井が十三の事を思い出す時に発する言葉に最もゾッとさせられる所にあります。いじめられる側といじめる側の関係性のリアリズムが、この赤井のセリフに込められていると僕は思います。

井上三太作品(のサブカルっぽさとかが苦手)が嫌いな人も、これは是非読んで見てほしい、正統派マンガの秀作です。

*1:TT2の序盤でもこのテンションは確認できますよね。「卵の白身みてーだ!」

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