高村光太郎「智恵子の半生」

美に関する製作は公式の理念や、壮大な民族意識というようなものだけでは決して生れない。そういうものは或は製作の主題となり、或はその動機となる事はあっても、その製作が心の底から生れ出て、生きた血を持つに至るには、必ずそこに大きな愛のやりとりがいる。それは神の愛である事もあろう。大君の愛である事もあろう。又実に一人の女性の底ぬけの純愛である事があるのである。

自分の作ったものを熱愛の眼を以て見てくれる一人の人があるという意識ほど、美術家にとって力となるものはない。作りたいものを必ず作り上げる潜力となるものはない。

製作の結果は或は万人の為のものともなることがあろう。けれども製作するものの心はその一人の人に見てもらいたいだけで既に一ぱいなのが常である。

ひたすら身につまされる。

本数を稼ぐためだけに企画されたような、乱立する「会社の垣根を越えたコラボ!」、安易なセクシャル表現、ゴア。

商業ベースで作品を作る以上、マスを意識するのは当然だし、そこを無視するのは話にすらならない。だけど、お客さん一人の顔を見ながら(イメージしながら)考えたのか?と疑問を感じずにはいられないような品位の感じられないモノが最近多すぎる。何百万本売ろうとする気概は、一人の心を震わせようとする気概と両立していなければならない。

stay gold, ponyboy.

4Gamer.net ― Access Accepted第224回:id Software買収劇に見る,独立系デベロッパの現状

記事中段あたりの写真を見て、なんだか無性に涙が出そうになった。

左端ではにかむ青いTシャツの青年がジョン・カーマック。中央でひときわおどけてみせるタンクトップがジョン・ロメロ。ゲーム作りで飯を食べている人間なら知らないはずがない天才二人を擁し、この後「DOOM」「Quake」といった(金字塔、なんて言葉では片付けられないほどの)作品を立て続けに産み落とすモンスターカンパニーid software。その設立当初を写した歴史的なワンショット。

しかし、ここに写っているのは、吹き出さんばかりの情熱と才能を肉体に宿し、なによりもゲームを愛する、まだ何者でもない、ちっぽけな若者達の姿だ。

僕が仕事として初めてゲームを作ってから8年。それなりに責任のあるポジションを任され、部下(というわけではないけれど)を持ち、今もゲームを作っている。充実感のある毎日を過ごしている。ただ、この写真を見ていると、何か決定的なものを無くしてしまったような、そんな気がしてたまらなくなる。わき出るアイデアと魂を、大好きな友達と一つのゲームに込めて作っていた、ゲロを吐くほど楽しかったあの日々を思いだしてしまって、たまらない気持ちになる。

なお、注釈にもあるが、この写真のメンバーの殆どが今のidにはいない。「Quake」の後、ロメロは退社し、ION Stormを設立する。*1そしてカーマックはidに留まり、Zenimaxに買われるまでインディペンデントの姿勢を貫き、今も同社のトッププログラマとして最前線で戦い続けている。

http://www.4gamer.net/games/036/G003691/20090702050/images/02.jpg

余談:2008年の僕のGOTYは、カーマックプロデュース/プログラム*2/脚本の「Orcs & Elves(DS)」。もうダントツ。

*1:同じく写っているトム・ホールもION stome設立メンバー。また、ION Stormは後にウォーレン・スペクター(彼もまた不世出の天才)が加入、僕のオールタイムベストゲーム「Deus Ex」を発売する。

*2:携帯オリジナル版。DS版はその移植

マスターアップ

去年の5月あたりからJOINしていたプロジェクトが、先月末に終わった。一部コアな仕様の設計をしてはいるけど、今回はあくまでヘルプ・火消し的な立場での投入だったので、いつもの「自分が作った」という感慨は実はあまりない。このプロジェクトの初期段階時、僕は別の所で別のゲームを作っていたから仕方ないんだけど、なんていうか、終わったことを思い出すと、妙に寂しさだったり、物足りなさが心に浮かぶ。まるで恋人に昔の彼氏の話をされたときの嫉妬のような。何言ってるんだかよく分かんないけど。

明日からもゲームを作る毎日です。

余談:

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back to the roots.

偶然で必然な邂逅

Twitterを始めてからもう1年ほど経つ。利用期間は長いけど、発言数は多くもなく、積極的にFollowしたりとかされたりとかもない。ただそのスタンスがもの凄く楽なのでつい使い続けていた感じ。

先週の金曜、@niidome、@Msawaと渋谷で飲んだ。この二人は僕とほぼ同じ業界で労働している間柄で、共通の知り合いの話や、志の高いゲームの話、それぞれの仕事に対する思想や夢の話。酒の力を借りながら、僕にしては信じられないほど明け透けで恥ずかしいほど熱い言葉を、腹を割って交わすことができた。

あの日は僕にとって、ここ数年で一番衝撃的な夜だった。魂が研かれた夜だった。

これからもよろしく。

SHINJUKUにて

ネットで知り合った数少ない友人と食事をしてきた。彼とは約3年ぶりの対面。酒が入ったこともあってか、僕にしては珍しく、次から次へと本音が口からこぼれた一日だった。自分のゲーム作りに対しての思想や”覚悟”を他人に話したのは初めてかもしれない。

ただ、思い返してみれば普通に愚痴のような事を吐露してばかりだったような気がして、なんだか申し訳なかったなあ。

でも、楽しかった。

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