はじめに
今年も例によって恐ろしく仕事ばかりしていた。更にそれに加え、今年は私生活でいろいろデカイ環境の変化があり、ただただ慌ただしかった一年だった。
さてプレイしたゲームの量はどうだったかというと、やはり(仕事を除き)自分の趣味としてガッツリ遊んだタイトルは減ってしまい、逆に買ったはいいものの未プレイのゲームが極端に増えてしまった。
とはいえ、今年もやはり心震えるタイトルはもちろんあった。自分的にはややベタなので若干の気恥ずかしさはあるけれど、国内ではまだまだフォーカスされていないタイトルを中心に、5作品をピックアップして紹介したい。
まずは今年覚えている限りの、(仕事以外で)プレイしたゲーム一覧(モバイルアプリ、ブラウザゲーム除く。順不同)。
PC
- Sleeping Dogs
- The Darkness 2
- Tomb Raider(2013)
- Euro truck simulator 2
- The Cave
- Sim City(2013)
- Kentucky Route Zero
- Don’t Starve
- BioShock Infinite
- Monaco: What’s Yours is Mine
- Biohazard Revelations: Unveiled Edition
- Scrolls
- Saints Row: The Third
- Shadowrun Returns
- Papers, Please
- Payday 2
- ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア
- Project Zomboid
- The Stanley Parable
- Mercenary Kings (early access)
- Brothers – A Tale of Two Sons
- Foul Play
- Guacamelee! Gold Edition
- Risk of Rain
- Battlefield 4
- Farming Simulator 2013
- Gunpoint
- Retro City Rampage
- Mark of the Ninja
- Pinball FX 2
- War of The Roses
- State of Decay
- La-Mulana
- Rogue Legacy
- Organ Trail: Director’s Cut
- Awesomenauts
- The Bureau: XCOM Declassified
- Rise of the Triad
- Scribblenauts Unlimited
- Poker Night 2
- Gnomoria
- Toki Tori 2+
- Warframe
- Little Inferno
- Dead Space 3
PS3
- The Last of Us
Xbox360
- Grand Theft Auto 5
WiiU
- スーパーマリオ3Dワールド
3DS
- ドンキーコングリターンズ3D
- メタルマックス4
- スチームワールドディグ
- 任天童子 ※dsiウェア
- 真・女神転生IV
- ファイアーエムブレム 覚醒
- モンスターハンター4
PSvita
- ドラゴンズクラウン
- フォトカノ Kiss
その1:Brothers – A Tale of Two Sons (Starbreeze Studios, PC)
『The Chronicles of Riddick』『The Darkness』など、独特の画作りとプレイフィールで根強いファンを持つスウェーデンの職人集団Starbreeze Studiosが同郷の映画監督ジョセフ・ファレスとタッグを組んだ一本。
本作は「兄を左スティック、弟を右スティック」でそれぞれ独立して操作、そしてルート上に待ち受けるパズルを攻略していく。ゲーム的にはただそれだけなのだが、台詞や演出ではなく、このゲームメカニックや話の展開、構成のみで素晴しいリリシズムを生み出している。
ゲーム中に意味のわかる台詞は一切放たれない。しかしプレイヤーは兄がどんな性格か知っている。責任感が強く、不器用だが勇気があり、女の子に興味を持ち始めた年頃だ。そして時々いらつく事はあれど、弟思いの少年だ。そしてプレイヤーは弟がどんな性格か知っている。いたずら好きで、水が怖くてカナヅチで、動物によく懐かれる。そして音楽の才能を持ったやんちゃ坊主だ。これらを台詞や演出、ムービーで語るのではなく、プレイヤーはゲームを進めるにつれ、共に旅をし、互いを知るように、彼らを近くに感じていく。
そして、旅が終わりに近づく頃、前述した「兄を左スティック、弟を右スティック」というギミックが持つ本当の意味を知る。
思うように二人を動かせず、常にもどかしさを感じるであろう序盤。父を救うために旅に出たとはいえ、足並みが揃わない兄弟をプレイヤーは意図せず、操作によって再現する。そして後半。複雑化するパズルや厳しい試練にも二人は絶妙なコンビネーションを見せる。そこには旅の序盤にあったぎこちない関係は無い。多くの障害を乗り越え、信頼しあった兄弟の姿がある。プレイヤーの操作が習熟によって上達していく、その事実すらもこのゲームの重要なピースとなってしまうのだ。
その2:The Stanley Parable (Galactic Cafe, PC)
今年後半、恐らく最も話題を集めた、MOD上がりの一人称ADV。
主人公であるStanleyは、毎日毎日、同じ仕事を繰り返して生きてきた。しかしある日、ふと気づくと周囲の同僚が消えている。そしてPC越しに常に来ていた仕事の指示も途絶えた。一体何が起こったのか。Stanley = プレイヤーは席を立ち、謎を追い始める。
プレイヤーvsゲームマスターの図式を題材にした作品は少なくない。最も有名なのは恐らく、『トゥルーマン・ショー』あたりだろう。しかしこの『The Stanley Parable』が独特なのは、Stanleyの行動はプレイヤー自身の選択であり、ゲームマスターの妨害や誘導も、もちろんプレイヤーに対して行われるからだ(ビデオゲームなので当たり前なんだけど)。
たとえば、まっすぐな廊下を抜け、二つのドアを前にした時、ゲームマスターはナレーションで「二つの開かれたドアを見つけたStanley。彼は左のドアを通った」と語る。しかし実際に選択するのはStanley = プレイヤーである自分自身だ。言われた通りに進むのか、それとも裏をかいて右に進むか。本作でも最も象徴的なシーンだが、ゲーマーであれば、この選択はかつて何度もしてきたはずだ。たとえばRPG。村で困っているNPCに「村を救ってください!」と言われて(はい/いいえ)どちらを選ぶか。たとえばFPS。あからさまに強調されたメインルートの横に穿たれた側道。弾薬パックやシークレットのにおい。
慣れたゲーマーであれば誰でも経験がある、「ゲーム側の仕込み、意図を読む」行動。この『The Stanley Parable』はそれをゲームにした。プロット通りに進ませようとするゲームマスターに対し、どう行動すべきか、したいのか。正直、定価$11のタイトルとして考えるとボリュームは極端に短く、所謂「ゲームらしいゲーム」を求めるプレイヤーには薦めない。新しいゲーム体験をしたい、ビデオゲームの持つ”インタラクティビティ”の魔力を再確認したい人たちのためのゲームだ。
その3:Euro Truck Simulator 2 (SCS Software, PC)
恐らく今年一番プレイしたであろうタイトル。「でっかいトラックを乗り回して、貨物をヨーロッパ中に届ける」だけ。たったこれだけなのに何故か異常にプレイしてしまう中毒性を持つのがこのETS2。
「都市部で貨物を受け取り、遠方の目的地へ届ける」これの繰り返し。金を稼ぎ、より大きい車を買ったり、会社を大きくして従業員を雇ったりと、一応ゲーム的な要素はちりばめられてはいるが、本作のゲームプレイのほとんどは、ただひたすら「道を走る」だけに費やされる。だけど全然退屈ではない。このゲームの凄い点はここにある。
レースゲームが面白いと感じるのは、相手を追い抜く、タイムを縮めるといった事もあるだろうが、それよりも根源的なのは「車をうまく制御する」事にあるのだと思っている。そのプリミティブな遊びを「リアルな挙動の大型トラックを運転する」、「破損または大破が大きなペナルティ」である事で最大限にブーストさせている。市街地をカーブする際の内輪差。細い街道ギリギリの車幅で走り続ける中、正面に同じトラックが来たとき。道を間違えたからといって安易にバック出来ない故に生まれる緊張。イギリスから欧州本土、またはその逆の時の右側/左側走行へのトラップ。高速に合流する際のタイミング。何より夜間走行時の(プレイヤー自身の)睡魔との戦い。
映像表現とは全く別のベクトルから放たれたリアリティ。今更カイヨワを持ち出す気もないけれど、その面白さは鉄板だ。
その4:Risk of Rain (Chucklefish Games, PC)
今回ピックアップしたどのゲームよりも、最もピュアな「ゲームとしての面白さ」が詰まった大傑作。
この『Risk of Rain』は2Dプラットフォーマー+ローグライクな一品。全5階層のステージを進み、最終ステージのボスを倒せばクリアとなる。
操作するキャラクターは全10クラス(ただし最初は”commando”1種類しか選べない)。キャラクターは攻撃、回避、回復といった4つのスキルを持っており、立ち回り方に特徴が生まれる。スキルのコストはクールダウン制。レベルの上昇と共に威力も上がる。
またキャラクターの強化に重要なのが「装備」と「ドローン」。フィールド上には宝箱と破壊されたドローンの残骸が落ちている事があり、それらは全て「お金」によってオープン/修復できる。お金は基本的に敵がドロップするので、道中に出現する敵を倒す事のみがプレイヤー強化に直結する。敵を倒し続けていればひたすら強くなれる寸法だ。ただしそれではゲームが作業的になりすぎる。他のローグライクでは、このファーミングに対する防衛策として「空腹」(『シレン』ではこれに加え「風」)の概念があった。しかし『Risk of Rain』には空腹では無く、別の要素でこれを制御している。
それは「時間」の概念。本作ではゲーム開始とともにプレイ時間がカウントされ、一定時間が経過するたびに「難易度」が上昇する。難易度が上がるほど出現する敵がどんどん強化されていき、ボーッとしていれば最初の階層ですらエリート級の敵がアホのように沸いてしまう。しかもこの時間の制限がかなりタイトで、ちゃんとクリアするためにはそれなりの立ち回りが要求される。
新しい階層に到着したら、まずは次の階層へ進む「ポータル」を探すために移動する。このとき、道中に出現する敵は基本無視。道すがらに見つけた宝箱は金が無いので開けられないが、場所だけはしっかり覚えておく。そしてポータルを見つけたら即起動。ポータルは起動してから実際に使えるようになるまで90-120秒かかり、更にその間モンスターが沸きまくるので、ここの立ち回りが一番のポイントだ。ポータルを起動出来る頃には金もある程度蓄積しているので、あらかじめ見つけていた宝箱/ドローンを回収して装備を充実させる。そして急いで次の階層へと向かう。
実はこの「時間」を中心としたリソース管理と強化の立ち回りは、ローグライクとは全く別の、昨今最も人気のあるジャンルのメカニックとよく似ている。
そう、『LOL』『DoTA』といったMOBA系タイトルのそれだ。MOBAでは分単位、秒単位での立ち回りが要求される。素早く金を稼ぎ、装備・アイテムを購入。無駄なくレベリングをして優位に立つ、そして敵陣営を駆逐していく。『RoR』の時間による難易度上昇は、敵陣営のレベル/装備強化が行われていく様子の再現だ。それに取り残されないよう、勝ち抜ける性能になるよう、効率的に立ち回っていく事が勝利へのカギとなる。このプレイフィールの面白さは、2013年を生きるゲーマーであれば、だれでも理解できるはずだ。
『Risk of Rain』は、レトロ風の皮をかぶった、最も”今”なゲームだ。
memo:
どうしてもクリアできないプレイヤーは、ドローンを累計40機起動するとアンロックされる”engineer”か、モンスター図鑑を15種類集めて”huntress”を使うといい。
僕のお気に入りは”Acrid”。多重に発動するDPS攻撃のすさまじさは爽快の一言。
その5:Papers, Please (Lucas Pope, PC)
今まで没入感があるゲーム、(前述の『The Stanley Parable』のように)プレイヤー = 自分である事を強く意識したゲームは多々あったけれど、正直そのどれよりも『Papers, Please』は凄まじかった。
入国管理局の仕事はとにかく複雑で、日ごとにそのチェックする内容も、方法も変わっていく。一つ一つにモタついていたら金は稼げず、家にいる家族が飢え死にしてしまう。効率的にそれぞれをこなすためには、インゲームで何かを買ったり(一部でそういうものもあるが)、強化したりではなく、ただ「自分が適応していく」しかない。
バカみたいに多い参照用の書類を小さい机でどう広げるか、どのマークがどの国で、どの国の人間には就労ビザが必須なのか、どの国の人間は絶対通してはならないのか。上の都合で毎日バカみたいに変わっていく規則を覚えながら、自分がとにかく歯車として適応していくしかない。
極めて単純な作業の繰り返しにもかかわらず、「ボールペンコウジョウ」のようなミニマルな快楽は得られない。常に自分が振り回され、入管局にやってくる希望の無い人々の生殺与奪を自分が行っている事実。机の上に溜まる娼館のチラシ。まるでコモドール64で描かれたような、ベタっとして陰鬱な映像と音。
今遊ぶべき、紛れもない傑作。日本語版を待ってる暇があればブラウザで辞書を開け。
the other five +1
そのほか印象的だったタイトルは『Bioshock Infinite』『Project Zomboid』『Mercenary Kings (early access)』『Kentucky Route Zero』『Payday 2』と言ったところ。
それ以外でもとにかく驚いたのは『スーパーマリオ3Dワールド』の偏執的なまでのこだわり。エフェクト一個、テクスチャ一枚にもキ印レベルの気の使いように正直息が苦しくなった(遊ぶ分には全然いいんだけど)。しかしそんな『3Dワールド』も国内ではさほど振るわなかった。その反面、(別プラットフォームなので本来比較すべきじゃないんだけど)今時メッセージが全て(男も女も)ポポポ音、2Dキャラの歩行アニメは滑りまくりなタイトルがバカ売れっていう事にいろいろ思うことはあった。そのゲームが悪いって言いたいわけでは全く無いし、まあこんなのは今に始まった事ではないんだけど。
たぶん来年は今年以上に「効率的に売れる/売れそうなゲームを作ってナンボ」な世界になっていくだろう。コマーシャルな世界でゲームを作っている以上、「売れる者が勝者」である事に代わりはない。ないんだけど、それでも自分の中にある矜持だけは常に忘れずにいたい。神は細部に宿る。これは絶対、本当だ。
2014年もよろしくお願いいたします。
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