Papers, Please (Lucas Pope 2013: PC)
朝。
途切れない行列。
提出される書類とパスポート。
入国を懇願する人々。
有効期限切れやちょっとした書類の不備。
くまなく探し、不可の判を押す。
後ろに連なる、気の遠くなるほど長い列。
ため息を残し、遠ざかる人々。
手にはほんの少しの給料。
家に戻れば寒さに凍え、腹を空かし、咳が止まらない妻。息子。叔父。叔母。
食費、暖房で給料はほぼすべて飛ぶ。薬代はとても全員には行き渡らない。
俺と妻はここ数日何も食べていない。
朝。
今日も入国に必要な書類、確認項目が変わった。昨日の自爆テロのせいだ。
○○から来た人間は何があっても通すな。
自国民の通行には別途IDカードの提出を求めろ。
労働目的の入国には労働ビザを提出させろ。
家族はどんどん体調が悪くなっている。金が無い。
この仕事は歩合だ。多くの賃金を得るために、多くの人間を捌かなくてはならない。
しかし手続きはどんどん複雑になっていく。
頭の中で鳴り続ける「とにかく不可の判を押しまくれ」という声。
書類の不備を見逃してやった中年女。「来てね。サービスするから」売春宿のチラシをもらう。
このチラシは今日だけでもう4枚目だ。
“よう同志!○○万歳!”
提出されたクレヨンで文字が書かれたボール紙。
“ほらパスポートだよ、ほらこれで通れるよな!”
このじいさんは昨日も来ていた。
パスポートと言い張るこのゴミに書かれた国民番号は[1234-OKOK]。
若い女からは小さな紙切れを手渡される。震えた文字が並ぶ。
「Dari Ludumという男に騙されました、このままでは妹と私は売春させられてしまいます。どうかあいつを通さないで下さい」
脂で虹色に光る眼鏡をかけた男。
労働ビザとパスポート。表紙には○○の大きなロゴマーク。
全身スキャンを取る。正面。右側面。背面。
ガムテープで腰に張り付いた巨大な爆弾。
少々お待ち下さい、兵士を呼ぶ。
窓口にまで来てただニコニコしているだけの老女。
パスポートを提出してください。ああはいはい。
小汚いバッグをひっくり返してやっと出てきたそれは期限切れ。
時計の針が進む度、家族の命が削られていく。
殺意が首をもたげる。
朝。
途切れない行列。
提出される書類とパスポート。
入国を懇願する人々。
単なる不備。意図的な偽造。懐に隠した拳銃。
書類の不備をくまなく探し、不可の判を押す。兵士を呼ぶ。
連れ去られ際に突き刺さる罵倒と絶望の声。
叔母は飢えで、息子は風邪で死んだ。
明日も仕事だ。
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『Papers, Please』の舞台は1982年、共産圏での話だ。
そして2013年、今を生きる日本人の俺たち。
違いはどこにある。
好きなゲームに斬新なレビューが。
Papers,pleaseや、Eurotruck simulator2のように、
作業とその他ある程度のものだけ提示して、
感情云々はこちらまかせ、みたいなゲームが好きです。
>Furare
コメントありがとうございます。
映画や小説でもそうですが、プレイ後に”残る”何かがあるゲーム良いですよネ