仕込むフックのレイヤー構造

「Fallout:New Vegas」の特殊スキルの”Wild Wasteland”。このスキルを習得すると、ゲーム内世界の一部のオブジェクト/イベントが出現/書き換えられる。これらのほとんどはゲームそのものとは一切関係のない、モンティ・パイソンやスタートレック、エイリアン2といった映画・テレビの細かいネタのパロディばかりが転がる。

“Wild Wasteland”によって発生するイベントはアナウンスこそあれ、その元ネタが何なのか、オブジェクトが何を意味するのか一切説明はされない。元ネタを知っているプレイヤーはそれに気づきクスリとするが、分からないプレイヤーは完全に置いてけぼりにされる。

たとえば半年ほど前にNHK-FMで放送された「今日は一日”ゲーム音楽”三昧」。この番組の最後に流された曲が”ギャラガ”だった事。これはもちろん細野晴臣がプロデュースした日本初のVGMアルバム「ビデオ・ゲーム・ミュージック」へのリスペクトによるものだ。ただしこの選曲のフックは番組では一切説明がされなかった。

このどちらも、ただゲームを遊んでいるだけ/聴いているだけでは理解しえない場所にフックは仕込まれている。実際のゲームプレイや視聴の外側、もう一つ深いレイヤーに仕込まれたフックというのは、僕がゲームを作る上ですごく大切にしている要素だったりする。さすがに基本のゲーム構造に仕込むことは出来ないが、シナリオの端々、キャラ名・設定の端々、アイテム・武器名の端々に(しつこくない程度に)仕込ませるようにしている。

これは僕がマザー1,2を遊んだ時、旧ラブデリック界隈のゲームを遊んだ時、スチャダラパーの曲を聴いた時に”気づいた”感動が忘れられないからに他ならない。一プレイ/一聴した時にはスルーしていた何でもない文字列が、数年後、様々な知識や経験を蓄積し、再び遊んだ時、強烈な仕込みだったと気づいた時の脳の痺れは今でも忘れられない。

フラグの設定による情報公開の多層構造ではなく、プレイヤーの知識・経験による”気づき”の多層構造。「解るヤツだけ解ればいい」ハイブロウさは得てして独善的になりがちだけど、僕は自分が関わるゲームには常に仕込んで行きたいと思う。

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今日一日、フィールドに転がる色々なプロップのデザインや看板のテキストについて唸り続けていたら、後輩の子に「何でそんなに悩むんですか」と言われて、自分でも疑問に思ったので、あらためて考えをまとめててみました。

WILD FANCY ALLIANCE

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