Husking Bee ”Last Tour”3.5@Zepp Tokyo

 

 発表があった1.8でこそ「解散」というものに寂しさと悲しさを感じたけれど*1、正直、昨日の昼くらいまでは僕の中にそれがあまりリアルなものとして考えることができていなかった。今では考えられないことだけど、「行くのちょっと面倒だなあ」とさえも思ってしまっていた。

 午後3時ごろ、地元の大船駅から電車に乗って会場へと向かった。電車の中で、いつもザックに入れているiPodからハスキンの全アルバムをシャッフル再生し、ぼんやりと解散のことを考えていた。(こんなに素晴らしい曲を作るバンドが居なくなっちゃうのか、やっぱり寂しいな)なんて事を思いながら、iPodは1stから最新アルバムまでを淡々と再生していった。


 そして横浜駅を過ぎたあたりで、”Walk”が流れた。その瞬間、僕は恥ずかしくて情けないことに泣いてしまった。電車の中で、おじいさんやらおばあさんやら女子高生がいる中で。

 1.8の日記にも書いたとおり、僕はハスキンがきっかけで本当に様々なことを知ることができた。今でこそ当たり前に洋楽やロック・パンクを聴いているけど、ハスキンを知る前はしょうもない歌謡曲ばかりが周りで流れていて、特に音楽に対してそれほど強い感情というものを持ち合わせていなかった。僕の住んでいる所は横浜市でもド田舎のほうで、パンクやエモなんて自分が聴こうとしなければ一生耳に入ってこないような場所だったからだ。

 午後4時半頃、Zeppの前の青海駅に到着した。待ち合わせている友達が来る間、目の前を何人かの若い男女が通りすぎる。(ああ、Zeppに行くんだな)と思うと、妙な親近感が湧いた。しばらくして、友達が駅に着いたのでそのまままっすぐZeppに行った。

 会場では千人単位の人が既に並んでいて、係員が拡声器でしきりに整理番号を連呼していた。僕は友達と(デビッド・)ボウイの話やら最後に行ったライブの話、友達が留学する話などをして時間をつぶす。

 途中、東京FMの人に「ハスキンの曲の中で一番好きな曲はどれですか」「彼らに一言お願いします」というインタビューを受け、それまで友達とハスキンの話をする事を意図的に避けていた事に気づいたりもした。

 中に入り、まずはビールを一杯飲む。軽く酔ったせいで、心臓の音がより大きく感じる。

 そして予定時間を過ぎた頃、ハスキンがステージに登場した。歓声と悲鳴のなか、”#4″からライブが始まった。

 そこから終わりまではあっという間だ。僕はモッシュピットのすぐ近くに陣取っていたため、上から人がひっきりなしに飛んでくる。途中でメガネを吹っ飛ばされ、何処かに行ってしまった。そのため、ステージはぼんやりとしか見えなかった。

 最後に、イッソンが「この曲はお別れの歌ではないですが、今日はこの曲で皆さんにお礼を言いたいと思います。」と話して演奏した”You Came Back”が流れた瞬間に、またも僕は泣いてしまった。「Good Bye」「Good Bye」と苦しそうに繰り返し歌う声がもう堪らなかった。

 フラッシュバックとはいかないまでも、アルバム1枚1枚を買ったときの事を僕は思い出す。最初に買ったアルバムは2ndの『Put On Fresh Paint』で、高校に入りたての頃だった。1st『Grip』は同じく高校時代、3rdの『FOUR COLOR PROBLEM』と一緒に買った。家の近所の健康センター、ドリンクコーナーでのバイトから得られたほんの少しの給料で、自分で稼いだお金で買った初めてのCDだ。4th『The steady-state theory』の時は僕はもう専門学校に通っていて、自分の進路を決めていた頃。そして最後のアルバム『Variandante』の頃は、在学中から働いていた会社を辞めようと決意した頃に発売された。

 アンコールの最後、”Anchor”の後、何度も頭を下げるテッキン、イッソンが少し恥ずかしそうにしながら「みんなもこの曲を待ってるんだろうな」「明日のために取っておいたんだぞ」と、かき鳴らし始めた”Walk”で僕はもうどうしようもない気持ちになった。電車の中よりもたくさんの人がいる中で、僕と同年代の男女がひしめき合うZeppの会場で泣いてしまった。裸眼ではぼんやりとしか見えないステージが、汗と涙でもっとぼやけてしまった。それでも耳から聴こえてくる歌声ははっきりと形を成して、僕の体を震わせた。

 ライブが終わってから、どこか落ち着かない気持ちが続いている。号泣して泣きじゃくるわけではないけど、時々、ため息が漏れる。今日も電車を待つ間、iPodからハスキンの曲が流れてはいちいち涙ぐんだ。

 たぶん僕は、これからどんなバンドが解散しようと、この時以上の何かを感じる事はないだろう。レディオヘッドが、イースタンが、オアシスが解散しようと、ハスキン以上に何かを感じることはないだろう。彼らはライブ中、何度も頭を下げ、「ありがとう」と言ってくれていた。僕はそのたび、(本当にありがとう、と言うのは僕のほうだ)と思っていた。たぶんそんなことはこの先1度としてないだろうけど、直接、面と向かってお礼を言いたいと今でも心から思う。

 本当にありがとうございました。いつか違う形・別々であれ、4人がステージに戻ってくることを楽しみに待っています。

 結局、僕のメガネは無くしたきり、戻ってはこなかった。

GRIPPUT ON FRESH PAINTFOUR COLOR PROBLEM-the steady-state theory-variandante

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