ガンスリンガーおっさん – Red Dead Redemption

吹きすさぶ砂嵐とタンブルウィード。軋むウェスタンドア。机を叩くグラスの音と下卑た笑い声。

男ならば一度は焦がれる、馬と銃と死が覆う世界。

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そんな西部劇の世界を、空気感の表現に定評があり、またフリーロームの第一人者たるRockstar Gamesが本気で作ったとなればもう、俺たちは黙ってなんかいられない。

つまりこの「Red Dead Redemption」は億泰の言うところの「モッツァツァ・・・?」「たとえるならサイモンとガーファンクルのデュエット!ウッチャンに対するナンチャン!高森朝雄の原作に対するちばてつやの『あしたのジョー』!」であり、最高に面白い事はジョセフの言うところの「コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実」なのだ。*1

ゲームは、主人公John MarstonがArmadilloの町に降り立つところからはじまる。かつてのギャング仲間であるBill Williamsonを捕らえるため、司法機関から駆り出されたMarstonは、一度は捨てたピースメーカーを握り、己の過去の贖罪(Redemption)のため、Williamsonの根城であるマーサー砦へと向かう。

初っぱなからかなり先が気になる脚本だが、実際にゲームを遊ぶと正直全然メインミッションは進まない。というのも、寄り道要素の面白さが尋常じゃなく、つい2,3時間ダラダラと馬を走らせてしまう。

様々な野生動物との狩り。ランダムに発生する馬泥棒・強盗・オオカミに襲われる人・美人局。ポーカー、ブラックジャック、ライアーズダイスといったミニゲーム。俺たちのイメージする西部の世界がむせ返る程の濃さで全方位的にどこまでも広がっている。

立ち振る舞いだって自由だ。ゲームのパラメーターには「Fame」と「Honor」という概念があり、プレイヤーの行動によって変化していく。「Fame」はMarstonがどれだけ有名かを示し、上昇するに従い、店での買い物が安くなったり、人々から助けを求められやすくなる。「Honor」は+/-50で表現され、悪人的な行動をすればマイナスに、善人らしく行動すればプラスに働く。Marstonが無法者として名をはせるか、英雄として歴史に名を残すかは、プレイヤーだけが知っている。

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ちなみに、本日の我がMarstonは、高レートのポーカーに1時間ほど挑み、2000チップ獲得を賭けて勝負を挑んだ所、喜劇役者みたいな顔をしたメキシコ野郎に大敗。頭にきてナイフで刺し殺すも保安官に追い回され、やむなく馬で逃走。山の中腹まで走り逃げ切ったとホッとした瞬間、茂みに隠れていたクーガーに一撃で喰い殺されたのであった。荒野には死が常に横たわる。

Red Dead Redemption(輸入版:アジア)

Red Dead Redemption(輸入版:アジア)

*1:カプコン(途中まで)制作の前作「Red Dead Revolver」は、(ハード上・スケジュール等の制約もあり)西部劇の主人公を追体験させるようなリニア設計で、カバーシステムや決闘モードといった意欲的な仕様も多かったが、テンポの悪さと単調さで評価はふるわなかった

Dragon Age :Origins(PC)

製作はBioware。ゴア&セックス描写上等の「大人のためのダークファンタジー」を謳った超骨太RPG。

バトルは「バルダーズ・ゲート」にSLG(と言うと語弊があるけど)的なパーティーメンバーの戦略マネジメントが合わさった感覚。戦況に合わせ、適宜メンバーのスキルやら立ち回りやらを指示しつつ個別撃破、というのが基本のよう(いまのところ)。ゲーム中はSpaceで常にポーズがかけられ、その間に戦略を練って各メンバーに指示、というノリなので、ハック&スラッシュの爽快感というよりも、RTS的な「自分の企みがカチっとはまったときの気持ちよさ」を感じさせる。

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アドベンチャー部分は「Mass Effect」をはるかに上回る選択肢/バリエーションの多さ。仲間とのちょっとした雑談ですら3~4パターンの選択肢が4度ほど出てくる。また、世界観を説明するサブテキストの量も尋常じゃない。正直言ってこの濃さには目がくらむ。英語力が伴えばもう最高。最高だ。

そう。問題は英語力。僕でも意味はそれなりに分るんだけど、とにかくゲーム中の選択肢の一つ一つに意味があるので、誤った答えを言わないよう、慎重に読み進めてたらゲームが全然進まない。一度適当にナメた返事をNPCにしたらそいつが激昂、10人くらいにリンチされて以来怖くてしかたない。正直、英語を読んでる時間のほうが多い気がする。まるでドリッピーを遊んでる気分。

Dragon Age: Origins (輸入版)

Dragon Age: Origins (輸入版)

Xbox360「Braid」


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Xbox Live Arcadeにて8/6から配信中の新作。何の気なしにDLしてみたんだけど、予想を大いに上回るクオリティで大満足。このゲーム、ジャンルは横視点のアクションパズルで、主人公の『時間を巻き戻せる』という特技を駆使してギミックを解いていく、というもの。

「時間巻き戻し」はいつでも好きなだけ実行できる。このゲームでは敵に接触したら死ぬ仕様だけど、接触して死んだと同時に「巻き戻し」を発動して「死ぬ前」にいつでも戻せるため、事実上ゲームオーバーが存在しない。つまりアクション部分での難易度はほぼゼロ*1。しかしこのBraidの真骨頂は『時間巻き戻し』を使った『パズル』。この部分の難解さ・秀逸さはここ最近僕が触れた中でも白眉の出来で、ひさびさに感激した。

『巻き戻し』を使った遊びの一例をすこし紹介。

基本的に『巻き戻し』を行うと自分を含めた全てのオブジェクトがその影響を受けるのだけど、時にその『巻き戻し』が通用しないものが存在する。それはゲーム中では緑のオーラに包まれたオブジェクトがそれにあたる。

たとえば一度落ちたら這い上がれない高さの落とし穴がある。その底には「緑のオーラに包まれた鍵」。この鍵がなければ先に進めない。そういうステージがあるとする。一度落下した落とし穴から這い上がるのは簡単で、時間を巻き戻して「落ちる前の状態」にすれば良い。そして緑のオーラに包まれたオブジェクトは時間の影響を受けないため、『巻き戻し』が行われてもそのオブジェクトは元に戻らない。

つまり、「一度穴に落下し、鍵を入手。その後『巻き戻し』をすれば、「カギを持ったまま穴に落ちる前の状態に巻戻る」」。

これ以外にも、「巻き戻された時間の重複再生」「スロー」など、「時間」を使ったパズルはステージが進むにつれ加速度的に複雑化していくので、もの凄く頭を使う。その一つ一つがよく練られていて、そのたびに感嘆してしまう。

そしてどうでもいい話だけど、会社のみんなで遊んでいて気づいたのが、ジョジョを読んでいる人間の「気づく」スピードの早さに笑ってしまった。僕もそうだけど、時間ネタを知っているだけあって、非読者よりもはるかにカンが良かった。

…という事で、1200ポイントというやや高めの価格と、主人公の顔が野々村真に似ているところがアレだけど、ゲーム好きは是非触れて欲しい一本。そしてもちろんジョジョ好きにも。

Braid 公式

*1:タイミングがシビアな足場ジャンプなど、厳密にはそれなりのアクション性はある

極私的2007年のBest「Portal」

ハーフライフ 2 オレンジボックス【日本語版】

ハーフライフ 2 オレンジボックス【日本語版】

今年のゲーム業界は近年でも類を見ないほどの傑作/大作が数多くリリースされたのが印象的だった。国内では7年ぶりに再生した「高速カードバトル カードヒーロー」や、メタRPG的モチーフを高いレベルで租借し、別ジャンルに組み替えた「勇者のくせになまいきだ。」やグラフィック/ゲームデザインのハイセンスさに舌を巻く「PATAPON」、ヴァニラウェアの新作「オーディンスフィア」*1など、小品でありながら非常に良質なタイトルが多かったように思う。もちろん「スーパーマリオギャラクシー」も忘れてはいない。

しかし、今年の海外のビデオゲームシーンの充実さは正直異常だった。

各種海外メディアが軒並みGame of the yearに挙げる「BioShock」(PC) 、スケボーゲーム=トニーホークという図式が当たり前のジャンルに勝負を挑み、そのパイを半分以上奪い取った*2「Skate.」(Xbox360/PS3)、完全な外注制作ながら、グラフィック/サウンド(敬愛してやまないvirt!!)/バランス全てが近年の内製作品以上にコナミの血を色濃く受け継いだ「Contra4」(NDS)、他にも「CoD4」や「Halo3」(Xbox360)、「Mass Effect」(Xbox360)「Crysis」(PC)など、年間ベスト級の作品が今年大量にリリースされている。

そんな粒ぞろいの中でも、僕がダントツで今年のベストに挙げたいのが「Portal」だ。同じ「OrangeBox」に入っている「Team Fortress 2」のグラフィックのアプローチやレベルデザイン、非常にセンシティブなバランス取りにも感動したが、「Portal」の完成度には本当に腰が抜けた。

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まず、「空間をつなげる二つの穴を作成してマップを攻略する」という根幹のアイデアが素晴らしい。「空間をつなげる」レベルのネタを思いつく事はそれほど難しくないが、そこに「スピードの維持」を加える事で、システムの可能性が膨大に広がっている*3

しかしこのシステムには問題があって、複雑ではないが、感覚的に理解する事が難しい。「Portal」ではその問題を秀逸なレベルデザインによって解決している。このレベルデザインは非常に”任天堂的”な思想によって組み立てられていて*4、プレイヤーに気付かせないデザイン側の適度な誘導と、プレイヤーが思考し、解決することで深くシステムを理解させる事に成功している。これにより、プレイヤーはストレスなくシステムを学習し、ゲームの中盤になれば直感的に思考、操作できるようになる。

そして、ゲームをただのパズルで終わらせない膨大かつ緻密なバックグラウンドに基づいたストーリー。これも本当に素晴らしい。パズルゲームにおいてシナリオは往々にして蔑ろにされがちだが、「Portal」ではゲーム開始時「新技術の臨床実験」という状況設定のみが知らされ、ステージ進行に伴って徐々に全貌が明らかにされていく。このハイクオリティなストーリーが、プレイヤーのモチベーションを高め、またゲーム全体を美しくまとめ上げている。

断言するが、この「Portal」を遊ばずにFPSの将来について語るような評論家、編集者、レビュアーの意見は全て無視していい。

ただ正直な話、僕はこの「Portal」を日本人が作れなかった事が何よりも悔しい。映画的なストーリーやデザインセンスはともかくとして、ひとつの突出したネタを軸に作品を作り上げる思想は、横井軍平を始祖として連綿と日本人が得意としてきた仕事のはずだからだ。

今日本のゲーム業界が警戒する相手はEAでもActivision Blizzardでもなく*5、Valveだと僕は思っている。

しかし前述の「勇者~」や「PATAPON」を初めとするコンパクトな意欲作が再び目立つようになってきた事は救いで、ここ数年迷いのあった日本の開発の方向性がいい形で絞れてきた事を感じさせる。

来年こそは、今年世話になった分、極東からの強烈なアンサーを見せ付けてやろうじゃないか。

それでは、よいお年を。

Portal – Teaser Trailer


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公式トレーラー。

Portal – Credits Song ‘Still Alive’


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Portalのエンディングテーマ「Still Alive」。歌詞もまた世界観を補間する重要なヒントとなっている。素で聴くだけでも十分いい曲だが、ゲームをクリアした後に聴くと感動もまたひとしお。

*1:ヴァニラウェアはIGNの「PS2:Best Developer」を受賞している

*2:むしろ操作性の"リアルさ"では10歩先に抜き去った

*3:ゲーム内では「フリング」と呼ばれる。重力を利用して勢い良くポータルに飛び込み、もう一方のポータルからその勢いで強く飛び出すテクニック。

*4:個人的には、ここ最近の内製の作品よりも任天堂的であると言えるほど、模範的なレベルデザインがなされていると思う。

*5:Blizzも物凄く丁寧で妥協のないゲーム作りで尊敬している

SFC「天地創造」ENIX/Quintet

ここ2週間程、勉強のために「天地創造」をプレイしていた。帰宅後の1時間をこのゲームに割き、日曜にやっとクリアできた。

プレイしてすぐに感じたが、流石ゲーム史上に残るSFCアクションRPGの金字塔なだけあり、非常にクオリティの高い、とても良い作品だった。発売当時にクリアはしていたものの、久しぶりに遊んでそう再認識した。

アクション部分に関して言えば、正直荒削り感が漂うのは否めないが、それを補って余りあるグラフィックセンス、技術とセンス両方が高いレベルで融合した画面演出、音楽、そしてシナリオ。90年代RPGデベロッパーの雄、クインテットの到達点といって間違いない。

最近はPCゲームが普通の量販店で買えたり、輸入版がネットで簡単に注文できたり、今月はフルローカライズされたOblivionがリリースされるなど、海外産のRPGが普通に遊べるようになった。高い技術力と豊富な予算から生まれる重厚でリアリズムあふれるそれらは、僕らにこれまでとは比べ物にならないほどの驚きと没入感を与えてくれる。

だけどこの「天地創造」全体が持つうっすらとした物悲しさ、クリア時にふと心に押し寄せる、ほんの少しの寂しさは、JRPGだけが持つ素晴らしさであり、僕が今でも埃まみれの旧世代機を引っ張り出し、息をフーフーさせながらプレイしてしまう理由なのだ。

追記:天地創造についてのテキストを書きました>FLATAGE 04.