He came back – メタルマックス3

メタルマックス3 Limited Edition

メタルマックス3 Limited Edition

メタルマックスが帰ってきた。

僕がこのシリーズに出会ったのは中学1年の頃。学校のすぐ横にあったゲーム屋。「スーパーボンバーマン」売った2500円を元手に「2」を買ったのがはじまりだった。

いきなり焼き殺される育ての親。生身で戦うと勝つことがほぼ不可能な敵。戦車を入手したときの高揚感。その戦車の幅広く奥深いカスタマイズ性。ドラム缶。金属探知機を使い、フィールド中の埋もれたアイテムを探す楽しさ。ガム。さきわれスプーン。ドラム缶。

もう本当に気が狂うかと思った。野郎の夢である戦車・改造・文明の崩壊した世界*1。そのすべてがどうしようもないくらい面白くて楽しくて、全く初めてのエクスペリエンスが洪水のようにブラウン管から僕に降り注いだ。カートリッジにぎっしり詰まった開発者達の熱量はコントローラから伝い、脳の奥底に深く刺さり込んだ。その病状は、戦車のパラメータの効果の研究*2やモンスターのドロップ率の調査をする程に重かった。

今思えば僕がゲーム作りに本格的に興味を持ちだしたのはそれが最初だったように思う。

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それから10数年。僕はそのとき煩った病気が元で、ゲーム開発会社のディレクターになった。そしてメタルマックスはと言えば、開発元のデータイーストが消滅し、権利関係のゴタゴタに巻き込まれながらも「メタルサーガ」と名を変え、断続的に新作がリリースされた。

しかしそのどれもが、技術不足やシステムの未熟さが目立つものばかりだった。オリジナルの開発者が作った「鋼の季節」ですら、オールドスクーラー達を満足させるものではなかった*3

「もう期待するのはやめよう。メタルマックスは死んだ」

この呪われたタイトルが復活することは二度と無い、誰もがそう思っていたであろう2010年7の月、17年ぶりのナンバリングタイトル「メタルマックス3」が届けられた。

もう本当に気が狂うかと思った。中学生時代の僕が心焦がれたビデオゲームの空気がそのまま、DSの2画面の中にあった。いきなり放り出され、何をすればいいのか全く教えてくれない強烈な父性。貧乏は無力である事を体現したバランス。世界観を語るためだけに存在する大量の無意味アイテム。すぐ死ぬ犬。それらすべてが僕らオールドスクーラーには懐かしく、また今の時代では新鮮に感じた*4

進化がない、懐古野郎向けのゲーム、思い出補正。正直そんなことはどうだっていい。面白ければそれでいい。それで売れればもっといい。確かにこのゲームには、ファン目線で見たとしても仕様上の欠点は大小いくらでもある。UI設計やら、コリジョンの判定やら、シャシー改造の仕様上の欠陥やら、僕らのようなゲーム屋はそういう所がどうしても目に付くし、講釈垂れたくなる気持ちだってわかる。

それでも僕はメタルマックス3を愛している。29歳になり、腰痛に悩まされる小汚いおっさんの心を、13歳の毛の生えたての子供の時と同じように朝まで遊ばせる熱量がある。ワールドマップ全部を踏破し、調べ尽くそうと思わせる熱量がある。

どれだけ待たせたと思ってるンだよ面白いじゃないか馬鹿野郎!

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*1:ポストアポカリプスものの金字塔、Fallolutが北米で登場するのはこの四年後だ

*2:子供なので精度は低い

*3:とはいえ、個々のシステムでは意欲的なチャレンジも行われていた。その点は評価したい。

*4:2010年の今、若いゲーマーには新しいゲームプレイが待っているだろう

さらば青春の輝き – 風来のシレン4 -神の眼と悪魔のヘソ-

不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ

不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ

ひとまずメインのダンジョン「エメラルドパレス」を踏破。

これまで10数時間遊んで抱いた印象として、ゲームそのものの完成度としては、シレンシリーズの中でも会心の出来。個人的には初代・月影村に並ぶ高バランスの一本だと言える。

武器・盾のロストを(ある程度)予防できる”タグ”と、復活と脱出を兼ねる”やりなおし草”など、ベース部分での難易度を落としつつ、一歩先で常に死の危険を作る「夜」によって定期的にシビアな状況を作り出す。この「夜システム」による難易度の揺らぎは、ゲームに適度な緊張感を与え、手練のシレンジャーをも脅かす。

また、武器・盾の「成長」も、あらゆる場面でプレイヤーの”選択”を作り出す良システム。使い込む事で強くなる気持ちよさと、コレクタブルな楽しさも内包し、基本のゲームプレイとの親和性がかなり高い。

しかし、個人的に非常に不満だったのは、ゲームに登場するNPCの扱いがぞんざいすぎる事。シレンはゲームの表現・システムの設計上、世界がもの凄く狭い。モンスターを除き、登場するNPCはおそらく100キャラ前後。この数は他のゲームからすると圧倒的に少ない。

だからこそ、1キャラ1キャラに丁寧なセリフやバックボーン、個性付けが出来る。これまでのシレンは、この極めてミクロな世界だからこそ、細かなディテールまでデザインされた世界観や人間関係、村々の空気すらも感じることができた。この大傑作が生まれたのも、この人間臭いNPCたちの造型があってこそだった。

NPCに話すたびに表示される「男」「娘」「若者」の血の通っていない文字列。ナオキやビビンギダ、ケヤキやアモカチといった面々の佇まいとセリフから醸し出される生活感と、リーバ八獣神に見守られ、また弄ばれる運命の妙。この何とも言えぬ愛すべき独特の空気感。それらが本作からは完全にスポイルされている。僕はこれが本当に悲しかった*1

本作「風来のシレン4 -神の眼と悪魔のヘソ-」は世界観やキャラのオリジナリティ、言語センスの輝きは失われてしまったが、ローグライク/シレンという遊技としては完成度の高い佳作であることは間違いない。クリア後のダンジョンも個性と戦略性が両立したものばかりだ*2

シレンジャー、そして厳しい状況が続くチュンソフトに、旅の神クロンの追い風が吹かんことを。

*1:そして図鑑などのテキスト周りの品の無いネットスラングの乱用。正直本作のテキスト周りの担当者は低俗で志の低いクソ野郎だ。

*2:個人的には「二撃の洞窟」が好み

電子シャーマン – Alien Shooter 2: Reloaded

別に好物でも何でもないのに、気がつけば袋一杯食べてしまう節分の豆。別に楽しいわけでもないのに、ただダラダラ反復して潰してしまうエアクッションの粒。それと同じように、とりわけ面白いわけでも何でもないのに何故か十時間もかけてクリアしてしまったゲーム。

その名は「Alien Shooter 2: Reloaded」。

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定価$10未満でリリースされる、駄菓子感覚で遊べる”バリューゲーム”。そのジャンルの中でも、ひたすら見下ろし型Hack ‘n Slash*1ゲームばかりを開発し続けるロシアのデベロッパー、Sigma Teamが開発した一本。

内容は超シンプル。全方向からひたすら沸きまくるエイリアンの群をマウスで狙い、撃ちまくるだけ。マップ上に散らばるお金を集めてショップで装備をカスタマイズといった要素もあることにはあるけど、それも別に駆け引きもクソもあったもんじゃない。当然ストーリーも病院食ばりの薄味っぷり。

しかし、だからこそ、プレイに妙なトリップ感が生まれてくる。

「沸く」>「撃つ」>「肉片」…。この単調なサイクルがゲーム開始からエンディングまでひたすら続く。本当に全く変化もないまま、ずっと同じだ。銃撃音はやたらと小気味良く響き、赤い花が画面一杯に咲いていく。単純な動作とリズムの繰り返し、まさに洗脳で使われる常套手段の如し!

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ゲームそのものを切り取ると、正直面白くも何ともない。プリレンダのキャラが動き回るクォータービューに感慨を持つ人だったらまだ何とか、というレベル。

でも何故かやっちゃうんだよなあ…。

開発元公式サイト

steamストア

*1:ただしアイテム探索/トレハン要素はほぼゼロ

慣れってすごいね – 仮面幻影殺人事件

所謂「ポイント&クリック型」と呼ばれる、極めてオーソドックスなADV。元は携帯電話向けのアプリとして展開されているシリーズ「探偵・癸生川凌介事件譚」の一編*1。この「癸生川~」シリーズは、携帯向けアプリにしては骨太なシナリオ、また、今や絶滅危惧種である本格志向の推理アドベンチャーとしてファンも多く、本作はシリーズ待望のニンテンドーDSへ”昇格”となった初のタイトル。

主人公”生王 正生(いくるみ まさお)”は携帯ゲームのシナリオライター。*2ゲームのネタ探しのため、癸生川探偵事務所に出入りすることが日課で、携帯アプリの他作品同様、本作も生王が事務所へ来訪する所から幕が上がる。

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多人数参加型推理ADV「MO(ミスティ・オンライン)」。βテストへの参加を依頼された生王は、ゲームをプレイするため、癸生川探偵事務所へ向かう。そこで、探偵事務所の助手、白鷺洲 伊綱(さぎしま いづな)と協力しながら、ゲーム内で企画された殺人事件の”捜査”をする。時を同じくして、ゲーム内とまったく同じ状況での事件が発生。生王と伊綱は、オンラインゲームと現実を行き来し、奇妙な事件へと立ち向かう。

とにかくこのゲームでまず目を引くのはなんと言ってもグラフィック。どう見ても商品レベルに達していないキャラモデルがいちいち大見得を切ったポージングで、しつこいくらいにバシバシと演技していく。しかしそれに臆してこのゲームを遊ばないのは非常に勿体ない。大丈夫だ。まるで「くさや」の臭いよろしく、この(はっきりいってヒドい)グラフィックもゲームを遊んでいくにつれ、妙な魅力と空気感を演出しているように感じてくる。(多分これはどう考えても言い過ぎだろうけど)このゲームは、昨今のビデオゲーム開発において各スタジオが非常に苦労している「独自の雰囲気」の獲得に成功している。はず。

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ゲームシステム自体は先述したとおり、何の変哲もない推理ADVのそれ。メモ機能など、UIまわりでの工夫はあるが、ひたすら十分なフラグが立つまで、選択肢とポイントクリックを繰り返す、例のうんざりする仕様上の問題点もそのまま。

しかしそれを補って余りあるのがシナリオ。この「仮面幻影殺人事件」をADVファンの中で”隠れた名作”たらしめているものがこれだ。オンラインゲーム内と現実世界を行き来し、徐々に事件の核心へと迫っていく展開はプレイヤーを飽きさせない。適度なタイミングで登場する個性的な人物やイベントも、基本的にはしっかりとした伏線・理由の元に配置される。

推理ものとしてはやや強引な展開(特に真犯人周辺のくだり)もままあるが、それでもこの手のチンタラ系ADVが苦手な僕が最後まで遊びきれたんだから、良くできている。この作品を作った開発陣には拍手を送りたい。

同じディレクター(石山貴也)が開発したブラッドオブバハムートは大失敗作だけどな!

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件 Genki the Best

探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件 Genki the Best

*1:スタッフは替わりながらも、現在でもシリーズは継続中

*2:本作のスタッフクレジットにもシナリオ担当として、同名の人物が記されている。つまりそういうこと。

ヴィーゴの絵もちゃんとあるよ

出来の悪い版権ゲームの免罪符、”ファンなら買い”。この「Ghostbusters: The Video Game」は真の意味でのこの言葉を使っていい。ずっと夢にまで見た、あの3人+1人と一緒に幽霊退治ができるなんて!

ゲームの時系列は映画(ゴーストバスターズ/ゴーストバスターズ2)の”その後”。プレイヤーはヴェンクマン/スタンツ/ステングラーの元へ新しく入社した新入りとして、例のゴツイ掃除機「プロトンパック」を背負い、3人のサポートとして様々な怪奇現象に立ち向かう。そう、今回の”映画”の主人公はプレイヤーだ。あの映画の続きを自分が主演できる。もうそれだけでファンはご馳走すぎて気が狂うだろう。なにせ最初のボスがあのステイパフ(マシュマロマン)なんだから!

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正直グラフィックとかコリジョンとか操作感とか、ゲームそのもののプレイ感は「よく作られているが凡庸」。映画のファンじゃければ、「丁寧でまあ面白いね」程度の出来だ。だけどこのゲームには何よりも原作に対する愛がある。そりゃもうビックリするほどに。ボクセルの隙間からまるでスライムのように滲み出る、開発者たちの「俺はGBが大好きなんだよお!」という情念をヒシヒシと感じられるだろう。だからファンが遊んだならば、この及第点のゲームは傑作に変わる。だって開始して1分もしないうちにレイ・パーカー・ジュニアのあの音楽が流れるんだもの。

最高!

http://www.ghostbustersgame.com/

Ghostbusters(輸入版)

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