PressPopよりマンガ3冊

今僕が一番信頼している出版社「PressPop」にて注文していた3冊が一気に着弾。3冊とも大当たりのシロモノで本当に満足いく買い物であった。

フランク白黒ストーリーズ

フランク白黒ストーリーズ

フランク白黒ストーリーズ

あのF・F・コッポラ監督も愛読しているコミック”フランク”!

ジムから日本のファンへの震災復活応援プレゼント!

サイレント・コミックの金字塔フランクの白黒物語が、日本未発売の長編2作品を含んで1冊にまとまって、ずっしり分厚い448ページのソフトカバーで発売。この価格でジムの摩訶不思議ワールドにドープにトリップできるとは、今年最大のお買い得本です! (日本では未発表の“weathercraft””congress of the animais”含む全17話)

FRANK B&W

アメリカのオルタナ・コミック作家、ジム・ウードリングの代表作。モノクロと独特の描線で作られる画の気持ちよさと、軽快・不条理・皮肉たっぷりの内容が最高。久々に声を出して笑うこともしばしば。日本で近しい漫画家というと、強いて言えば島田虎之介あたりか。

淀川ハートブレイカーズ

淀川ハートブレイカーズ

淀川ハートブレイカーズ

レコードと安い酒と淡い恋。

泥酔の最中に見つける、真理みたいな物。

オール明けDJの背中に浮かぶ哀愁。

そして人々の営みを見守るミラーボール、、、。

これまでWEB「漫画の須田信太郎」他で発表され、音楽愛好家や一部の漫画読みたちの間で秘かに話題を呼んでいた連作漫画が遂に書籍化!!

淀川ハートブレイカーズ

90年代初頭にヤンマガで連載されていた大傑作ロックDJ漫画「江戸川ハートブレイカーズ」の須田信太郎が、原作にキングジョーを迎えた「江戸川~」の精神的続編。テクノやらハウスやらには無い、ロックDJだけが持つ妙なプライドやイジケ、レアグルーヴにかける思いとかそんなごた混ぜの感情とリアリティがぐっちゃぐちゃに弾けて混ざる。僕も3年ほど新宿でロックDJをやっていたので余計に胸に来るわけで。

イルリメの超名曲「トリミング」をフィーチャーした短編”連れてってよ”の素晴らしさと、キングジョーの半自伝”Still Crazy”のこの感じ。30になった僕としても身につまされる。

ゴーストワールド

ゴーストワールド日本語版

ゴーストワールド日本語版

イーニドとレベッカ、親友、ハイティーン、思春期、変化のない日々、近づいてくる大人の世界、そして2人の異なった未来、本当の世界、彼女たちの世界、遠いところ、ゴーストワールド、二人の女の子の物語、、、

お待たせしました!満を持してあのカルト的名作が復活!

世界中の永遠のモラトリアム・ガールズ&ボーイズのバイブル。主人公イーニドはティーンエイジ毒舌クィーン!

大ヒットとなった映画版(スカーレット・ヨハンソン等主演)の原作として2001年の発売。5000部を売り切り長らく絶版状態であった本作が10周年記念ということで増産決定!!

GHOST WORLD 2ND

初版を買えずじまいで延々待っていたところの待望の再プレス。作者はアメリカオルタナ・コミックの星、ダニエル・クロウズ。説明にもあるとおり、ソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソン主演で映像化された。

“現代版ライ麦畑でつかまえて”なんて呼ばれかたもしている本作。親友とのしょうもない会話、近隣の住人への嘲笑や不安、失敗した初体験、進学と別離。それがダニエル・クロウズ特有の気持ち悪さとペーソスでパッケージ。こりゃ確かに名作だわ。

ジミー・コリガン日本語版(1)

JIMMY CORRIGAN日本語版VOL.1

JIMMY CORRIGAN日本語版VOL.1

所謂オルタナティヴ・コミックスと呼ばれるジャンルにおける金字塔(とされている)、クリス・ウェアの傑作。原作がリリースされた2000年以降、この作品は数々の名だたるタイトルを受賞し、ニューヨーカー誌に至っては、「全てのマンガと呼ばれるものの代表作」とまで言わしめている。

主人公ジミー・コリガンは小太りで薄らハゲ、毎日パッとしない仕事をこなし、毎日職場にかかってくるママの世間話の相手をし、シリアルを食って寝るだけの冴えない(の一言じゃ済まされないほど冴えない)男。

その冴えない生活の歯車がずれはじめたきっかけは、飛行機のチケットが同封された一通の手紙。差出人は、今まで一度として会ったことのない父親からだった。そしてジミーは飛行機のチケットを手に、旅にでる―

というような内容。日本語版は3巻に分けて刊行していくそうなので、この1巻はちょうど物語が加速していく辺りで終了。

非常に洗練されたグラフィックとストーリーは当然として、とにかく装丁を初めとして、”本”としての完成度がすごい。ハードカバーの表紙をめくると、いきなり膨大な量のテキストがぎっしり並べられたページが出現。中身もなんというか偏執的。中にはクリス・ウェア自身が描いたであろうペーパークラフトまで入っている。なんというか、ページを開いてから読み終えるまで、息をつく暇が本当にない。それでいて全てのページが美しいから、まるでキッチリと重箱に整理され、色彩バランスも栄養バランスもバッチリな完璧弁当箱のよう。

定価2800円。フルカラーのマンガ的には高すぎる値段だけど、図書館に行ってでも読む価値は十分ある。

日本語版の当該ページ:http://www.presspop.com/shop/chris_ware/cw_008.html

相原コージ「真・異種格闘大戦」

真・異種格闘大戦 1 (アクションコミックス)

真・異種格闘大戦 1 (アクションコミックス)

今、相原コージといえば、IKKIで近々連載される「さるまん2.0」だが、僕にとってはこの「真・異種格闘大戦」が最高にホットだ。

あらゆる格闘技を制し、頂点に立った「地上最強の男」を”あくまでヒト科最強でしかない”と一笑に伏し、地球上から集められたライオン・ゾウ・トラといった名の通り”異種”を含めたトーナメント戦に誘う場面から始まるこのマンガ。このあまりにも”ありがち”で”誰でも考え付きそう”なシチュエーションにもかかわらず、物凄くアツくて面白い。

とにかく僕が強く惹かれるのが、「誰が勝つか分からない」ところ。マンガにおけるこの手のトーナメント戦ってのは、主役陣が大抵勝つか、または決勝ないし良い所まで善戦するのがセオリーで、いくら危機に陥ってもそういう邪推をしてしまうものだ。だけどこのマンガにはそれがない。何故なら本作には主人公が存在しない。またこのマンガには「トーナメント」以外なにも描かれていない。つまりその場の「戦い」以外で邪推する要素が殆ど無く、だからこそ次がどうなるのか、僕は本当に楽しみなのだ。

登場する動物も前述したライオンやゾウ、トラ・ワニといった順当なメンツもいれば、シマウマやクズリといったトリッキーなヤツもいて、各動物の身体的特徴や事実を基にした試合展開がなによりアツい。

ちなみに今のところ僕が応援しているのはクズリ。是非優勝して欲しいところ!

タイム涼介「あしたの弱音」

あしたの弱音 (BEAM COMIX)

あしたの弱音 (BEAM COMIX)

初めて本を発売日に買った。一年以上も待ち焦がれていた「あしたの弱音」の単行本。*1

単行本上でも語られているが、当初4ページのギャグマンガとして始まった本作。序盤は下ネタ全開のスラップスティックな学園ギャグとして展開。しかしある時から、作品としての性質が大きく変わっていく。それこそ中学生が成長するように、同じくしてこのマンガも急激に成長していく。

主人公「駄目元弱音」はヤンキー中学生。悶々とした学生生活を送りながら、日々屋上で思いをめぐらす。野菜を作りながら。

弱音はある理由から家を持たず、中学校を己の家とし、屋上で野菜を作り独り暮らしている。弱音には何も無い。家も無い。金も無い。女も居ない。鉄パイプはある。それでも弱音は現実と真正面を向き、生を謳歌する。

「将来っていつからが将来?」「孤独が痛いのは何故だろう」「幸せはいくらだろう」答えのない問いを繰り返していた弱音が、自分の進路を決め、農業高校に願書を出しにいくシーンは何度読んでも泣きそうになる。その願書に書かれている文と“願書”そのものの素晴らしさといったら!!

悲しいかなこの単行本には、ギャグ編ともいえる前半パートはバッサリ未収録だが、それでも、僕にとってこの本は経典となりうる強度がある。

「ジョジョの奇妙な冒険」「ワガランナァー」、そしてこの「あしたの弱音」。これらの作品を読んだ後、僕はたまらなく大声で叫びたくなる言葉がある。

『生きてるって最高!!!!』

*1:もちろん「アベックパンチ」も買った